2002.12.15

私は裁縫が苦手である。
夫に「Yシャツのボタン取れたからつけといて」と言われた日にゃ、出来る事なら無視してほっといて、見つかって怒られたら接着剤でつけてしまいたいと思うくらい、苦手である。
仕方ないので渋々命がけでボタンをつけることになるのだが、本当に苦手で、嫌いである。
こんな私は小学校中学校の家庭科の裁縫は勿論ママ出動!と頼みたいところだったが、外でフルタイムで働いていた母親は冷たかった。「自分のことは自分でやれ」を教育モットーにしていた母親は馬鹿な娘の宿題なんて手伝ってくれなかった。
母は和裁も洋裁もできる。浴衣も普段着用の着物も何枚も縫ってくれたが、宿題となると話は別なのだ。
数学よりも英語よりも家庭科の裁縫は一番嫌いで苦手だった。
中学を卒業し、幸い、家庭科のない工業高専に進めて、私は本当に嬉しかった。
しかし現実は甘かった。 短い下宿生活の後一人暮らしに突入すると裁縫キライではすまない生活が待っていた。
それでも極力、裁縫を避けてきたのだが・・・
編み物は好きだった。最後の糸の始末なんて、殆ど裁縫と同じじゃないかと言われることもあったがこれは苦にならない。しかし裁縫となるとやっぱりいやなのだ。

もともと着物は好きだった。
小さいころからよく着ていたし、人に着せてもらうと下手な人の場合高いお金払って苦しいのは私、なんてことになるので着付けを覚えることにしたのだ。
本を見ながらの独学だが、結構なんとかなるもんである。しかしただ着るだけではなく、着物はいろんな準備をしなければならないことに気づいた。
その中で半襟をつける作業が一番、つらいのは言うまでもない。
縫い目なんて見えない。見えないから適当でもいいはずなのだが、それでも苦手なのだ。
がたがたの縫い目、一定しない縫い幅を見ていると気分がどよーんと暗くなる。
きっちりしていない自分の性格をまざまざと見せ付けられるようで、まったく気分が暗くなる。

12月の某所の忘年会で着物を着ることになった。
私のテーマは「旅館の若おかみ」なのだ。しかし手品の助手もしなければならない。
チャイナ服を着たマジシャン「ゴルゴンゾーラマル」の「助手のマリリーン」。
私たちっていったい・・・。
それはともかく、10分程度で着替えなければならないので手軽なウールの袷を着ることにした。勿論帯は半幅である。
帯揚げも帯紐も使わない。
着物の柄は茶色と黒の横縞。帯は黒だから、半襟も黒がほしいところ。
しかし色々探してみたのだがいいものが見つからない。真っ黒はイヤ。柄がほしい。
あるようで、見つからない黒の柄入りの半襟。
あっても「アンタ何様!?」といいたくなるような値段だったり。
たかが普段着の半襟に5000円も出すわけにはいきませんとも、ええ。
ちゅうわけで無謀にも自作することになった。
ちょうどいいハギレも手に入れた。
50cm*50cmなので半分にちょんぎって合わせるだけ。
たったこれだけの作業だが私には気の遠くなるような作業に思える・・・・。
たかが直線縫いなのに・・・・

私の血と汗と涙の結晶、黒の半襟。



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