久しぶりにお弁当をもってのお出かけである。
少し前にネットで見つけた彦根城、玄宮園での「虫の音を聞く会」。
私も夫も生まれてこのかた都会で暮らしたことはないので、何を今更虫の音だい、と思いはしたが、幻想的な庭園で聞く虫の音、というのに惹かれて、早速下調べ開始。
近江牛が名物だそうな、むふふふふ。
先月、飛騨高山に行った。せっかくカメラは持っていったのだが、殆ど写真を撮らなかった。なので近場だけれど今回はいっぱい撮るぞ、とカメラも、換えの充電池も持って出発!
滋賀の、どこだったか忘れたが、サービスエリアに入ってお弁当を食べた。
こういうところのお土産はなかなか面白いものが多いので買う目的がなくてもとりあえずチェック。漬物、お菓子などはまぁどこにでもあるものだが、あったあった、お目当ての「朝採り野菜」!!形はいびつだがたくさんあって新鮮で安いとくればこれはもう買うしかありませぬ。どこのサービスエリアにでもあるものではなくて、いつも見つかるものではない。ラッキー!でももうお昼だったので残り少なく、かろうじて茄子を一袋購入。塩揉みもヨシ、揚げてもヨシ、漬けてもヨシ、汁物にいれてもヨシ。最近は安い時に大量に買い込んで、素揚げにして甘酢、もしくは濃い目のだしに漬け込むのがお気に入り。茄子は夫婦揃って大好きなのである。
彦根までは思ったよりも早く到着。
街は道が細く車が多い。彦根城は小高い小さい山にある。街中を走っていると、時々、ちらちらと彦根城が見える。
「虫の音」の次のお目当てである「骨董市」。二の丸駐車場で開催中。駐車料金は400円。昼間はこの「骨董市」と、キャッスルロード、博物館、城見物。夜になって「虫の音」。こういう計画であった。二の丸駐車場は、護国神社から入って左側にある。この入ったところには松がたくさん植えられており、植えられた当初47本あったことから「いろは松」と呼ばれているそうな。
彦根城についてはまったく予備知識がなかった。井伊直弼縁の城、という程度である。
しかし彦根城は日本に現存する木造天守閣4城のうちの一つであり、国宝であるそうな。そして城は二つのお堀に囲まれてい、1つの堀を越えたところに中学校、高校、裁判所まであるというのだから驚きである。こんなに広いところとは、本当に思っていなかった。
まずは「骨董市」。店は10ほど。着物、置物、器、掛け軸、昔のスターのブロマイド、ブリキのおもちゃ等々。私のお目当ては帯と器。普段用にもう一本、半幅が欲しいのである。古着ならば柔らかいし、締めやすい。でも、あれば、いいなぁという程度。絶対買うぞという意気込みではない。器は殆どが染付けの磁器ばかり。これまた普段使いたいとは思わないが、絵柄を見て回るのは好き。先日の飛騨高山でも骨董屋は3件ほど廻った。曇り具合のいいガラスや、面白い茶器、ヒビの入った器、掛け軸、絵、古新聞。買って帰りたいとはあんまり思わないけれど、骨董屋は面白い。夫は古いおもちゃ、ボードゲームなどみて楽しんでいた。結局これぞというものはなくて、手ぶらでそこを後にした。
キャッスルロードまで歩いていく。お堀の外側にあるこの通りは比較的新しいものらしく、通りに面して店がたくさん並んでいた。どれも同じような造りである。
お店は漬物、器、布、食べ物屋など。有名な鮒寿しも売っている。一度挑戦してみたいものだが、夫は頑として拒否。すごく美味しいかもしれないのになぁー。でもすごい匂いだという。耐えられるだろうか?でも美味しいのならば、やはり挑戦してみる価値はあるのではないか?誰か一緒に食べてみませんか?
近江牛のお店もあったが、お弁当でおなかが膨れている私も夫も食べられない。喫茶店もあったが、車の中でずっとコーヒーやらお茶やら飲んでたのでおなかもたぷんたぷん。
灯りの店もあった。早速入ってみたが、夫がこの手の香料に弱いのですぐ出た。中はどこにでもあるようなキャンドルやポプリだったが、希望者はそこでオリジナルのキャンドルを作成できるとか。こういうのが好きな人はいいだろうなぁと思いつつ、別の店へ行く。最初に入った器の店は信楽、美濃、織部。今、マグカップを探しているので色々見てみたが、これ欲しい!と思うようなものはなかった。信楽で感じのいい飯椀があったが高台がついていなかったのでパス。
もう一軒のほうも、見るにはいいが、使うには、なぁ・・・というものばかりだった。
私は街を歩いていて器の店があるととりあえず飛び込む。出張にいったときでも、時間が許す限り、駅前などで目につけばこれまた飛び込む。でも見れば見るほど、欲しいものが少なくなっていく。どこにでもあるものばかりが目について、最近めっきり欲しいと思う器がなくなってきた。ネットでも見るが、やっぱり買うときは実際に手に持ってみて決めたい。もう食器棚も満腹状態なので買わないほうがいいんだけどね。だから見なくてもいいんだけどね。でも10数年来の趣味だから、こればかりは止められない。それにしても飛騨で買ったきら漆の大名椀、これはアタリだったなぁ。
おなかいっぱいの状態では何を見ても食べたいとは思わず、漬物屋でも佃煮屋でも何も買わずにまたお城に戻ることにした。
どんよりした空。蒸し暑くもなく、涼しい風も時折吹いていて気持ちよかった。
城に戻り、博物館にいくことにした。これまた結構歩く。天守閣と玄宮園と博物館の共通チケット一人900円也。
博物館では入り口で靴を脱いでスリッパに履き替える。
中は涼しくて気持ちいい。この建物は、本来そこにあった表御殿を復元し、博物館機能をくっつけた建物である。能舞台、御殿、庭園が再現されているそうな。展示物は井伊家に伝わる大名道具が常設、あとはテーマごとの展示だが、この日は「越前出目家−井伊家伝来能面から−」であった。茶道具、能の面、衣装、絵画、古文書などである。少し入ったところに、壁一面に「井」と大きく染め抜かれた旗が飾ってあった。本当に大きくて、でも私は「丼」かと思ったので「どん」と声に出して読んでしまった。おなか一杯だったのに、アタクシったら・・・・。それから後はもういけない。「井」とあるものはすべて「丼」に見えてしまう。ああ、せっかく由緒ある素晴らしいものを見てるのに、アタクシったら・・・・。
能の面はたくさんあった。能に明るいわけではないので、どれをみてもどんなふうに使われるのかよくわからないが、それでも「若女」や「童子」など、どこかで見たような面もあって退屈はしなかった。雅楽器もあった。筝や笙があった。笙といえば「不良少女と呼ばれて」だろう。思わず「笙子ぅ!」とつぶやいてしまう私。琵琶もあった。大きい。もっと小振りかと思っていた。四弦四柱。知らなんだ。もっと弦が多いと思ってた。
博物館の中は人が少なかった。驚いたことに、ごついカメラで展示物をパシャパシャとシャッターにおさめる人がいた。いいのか?普通そういうことしちゃだめなんじゃないの?夫に言うと「でもそんなことどこにも書いてない。大抵書いてあるのにここにはない。・・・いいんじゃないの?」ですって。ほんまか?なので私も何か写そうと思ったがやっぱり根性がないので、再現され、年に何度か出し物もあるという能舞台を写すことにした。それからこれまた復元されたという表御殿の一部。そして庭園。いいなぁ、こんな庭。
能舞台はなんというか、丸出しの雨ざらし状態である。どう見てもこれは激しい雨が降ったら舞台まで濡れるぞ。いいのか?観客は建物の中から見ることができる。三面が客席である。舞台に向かって右側はお茶席になっていた。300円也。お菓子がついて500円。飲んでもいいと思ったのだが夫はいらないという。お菓子も欲しくないという。・・・どうしたんだ、具合悪いのか?向かって正面、左側は椅子がずらりと並んでいた。ああこんなところで仁左さまの一人舞でも見たいもんだわ。ビデオで能や狂言を見ることもできる。一つ5分程度。いくつか見たがよくわからなかった。狂言にしても能にしても、なんと不思議な歩き方。
時計を見るとここに一時間半ほどいたようだ。のんびり見ていたのだけどこんなに時間が経っているとは思わなかった。靴を履いて外に出る。今度は天守閣だ。
長い石段が続く。石の段の幅が一定しておらず、なんとも登りにくい。加えて日ごろの運動不足も手伝って、すぐ息があがる。
実は涼しくなってきたことだし、着物で来ようかと思っていた。お弁当をゆっくり作っていたら遅くなったのでやめたのであるが、やめて正解である。こんな石段、着物じゃしんどいわ。
天秤櫓、太鼓櫓を通って天守へ。小さい天守である。それにしてもいい眺め!琵琶湖がよく見える。風も気持ちよく、汗もかいた、ここでビールをきゅーっと飲みたい・・・・が、我慢、我慢。
しばらく休憩して天守へ行く。ここでも靴を脱ぎ、ビニール袋に入れて各自持つ。ここで最初の階段。結構急である。ジーンズでよかった。再度思う。
内部は全て木造である。木の色が素晴らしい。くねくねした木で組まれた天井も、黒光りしている戸も壁も、全て、木。
二つ目の階段。これがすごい!恐ろしく傾斜している。おまけに階段の幅も恐ろしく狭い。カメラ、靴、ショルダーバッグと3つも荷物のある私、高所恐怖症ではないがこの階段は本当に恐ろしい。上がることはなんとか出来るがこんな恐ろしい階段、果たして降りることができるだろうか?ああ、着物でこなくてよかった。改めて思ったが、それにしても恐ろしい。
ここもまた窓が一面にあり、風がよく通り、気持ちいい場所である。窓には全て網がかけられており、鉄砲窓と称された窓は開かないようになっていた。それにしても外側は白く塗られていたが、いざ入ってみると、光が入って多少明るいとはいえ、黒光りする木のせいかとても暗く、重々しく感じる。見かけは小さいおもちゃみたいな天守だが、中はさすが木造でどっしりしており、恐ろしい傾斜の階段もある。こんなアンバランスでいいのだろうか?
また階段であるが、ここは先ほどの階段ほど恐ろしくない。最上階にあがると少し明るくなった。窓から琵琶湖を見る。毎日こんな大きな湖を見るのはどんな気持ちだろう?昔の人もおなじ琵琶湖を見ていたのだとおもうと不思議な気持ちである。
さて降りることになったが、最初の階段はなんとか、前を向いて降りることができた。できたが、お尻をつけながら、階段に座りながらである。結構急である。私が落ちると思ってか、夫は私より先に下りてくれない。でもこの次の一番恐ろしい階段ではさっさと降りてどこかにいってしまった。こんな恐ろしい階段、下りれないよおおおお。でも仕方ないので、荷物を持ち直し、後ろ向きにおそるおそる下りる。誰になんといわれようとこんな階段まともに下りられるものか。
天守を出ると、ほっとした。
さてまだ「虫の音」まで時間がある。その辺をぶらぶら散歩することにした。
西の丸三重櫓に行くことにする。いつの間にやら廻りに人が全くいない。雑草も生い茂っており、売店もなにもない。右手に降りる石段があったので降りていくことにした。下に何があるのだろう?石段の幅が一定でないのは、敵が攻めてきたとき、敵が足元を常に意識させるためだそうだ。下ばかり向いてる敵を上から矢で攻めるのだとか。なるほど。本当に、歩きづらい石段だった。
しばらくいくと道は二手に分かれていて、右は玄宮園へ、左は梅林へ。
今から玄宮園にいくには早いので左の梅林にいくことにする。もう季節ではないので花もなければ実もないが、まぁ、よろしかろう。
しかし行けども行けども梅林はみえない。かなり歩いたのはずなのに。周りは緑だらけ。鬱蒼とした木々と砂利道。誰もいない。電線もなければ電柱もなく、車も通らず、人もおらず。鳥が鳴いていた。なんだかすごい山奥にきた気分になる。
私と夫はあまり並んで歩かないので、ここでも夫はかなり先を歩いていた。当然会話もなく、聞こえるのは鳥の声と、風に揺れる葉音と、砂利を踏む自分の足音だけだった。
梅林につく。ここには600本ほどの梅が植えられているらしい。花の季節にはすごい香りだろうなぁと想像しつつ、どこまでもどこまでも続いているような梅林を抜けていく。
そして二の丸の駐車場に戻った。時計を見ると驚いたことに、天守を出て1時間も歩いていた。・・・・。どおりで足が痛くなるはずだわ。サンダルや着物でこなくてよかった。彦根だし、9月だし、夜は寒くなるかと思って普通の靴をはいてきたのだ。・・・よかった。
それでも「虫の音」までまだ時間がある。二の丸にとめていた車を、玄宮園の隣の駐車場に移すことにしたが、思い立ってコンビニに行く。飲み物と、ちょっとおなかの足しになるようなものを買って玄宮園の隣の駐車場に車を止める。車は数台しかいなかった。5時を過ぎると駐車料金はタダになるようだ。
玄宮園は、中国唐時代の玄宗皇帝の離宮をなぞらえたもので、江戸時代初期の庭を現代に伝える名園なんだそうな。玄宗皇帝といえば楊貴妃か?正しい?大きな池があり、竹生島など近江八景などを模しているらしい。期待いっぱい。
話をしたり、食べたり飲んだりしながら、待つ。
10分前になったので車を出たのだが、出た途端すごい虫の音!!
ずっとエンジンをかけラジオを聴いていたので気がつかなかった。いつの間にか薄暗くなっていた。
チケットを渡して中に入り、船着場にいくとすでにもう人がたくさん並んでいた。舟で「大名様」するつもりだったのだが、仕方ない。帰りに乗ることにして先をゆく。
竹の灯火がたくさん置いてあった。なんとも幻想的な灯りである。いくつか小さい橋を渡り、「野点茶会」が行われているところに行く。ここには座るところもあり、ライトアップされた城壁や城も見える。着物姿のお姉ちゃん達がお茶やお菓子を配って歩く。お茶とお菓子で700円で、これも目的のひとつだったのだが、これまたさっき車で飲んだり食べたりしてる私達はもうなんにも食べられない。軽く一杯きこしめした私だったが、幻想的な雰囲気と虫の音にびっくりして酒もすっかり飛んでしまった。
それにしてもすごい虫の音。
ただ、黙って聞きほれてしまう。三種類くらいしかわからなかったが、八種類くらい聞けるらしい。場所によって聞こえる音も違ったので、一巡り、ゆっくり、じっくり聞けばわかるかもしれない。
ここは「日本の音百選」にも選ばれているそうな。
入り口からここに来るまで前後を歩く人たちは結構おしゃべりをしていたが、ここに座るとみな一様に黙り込む。静かに、虫の音と、邦楽を聴く。
ライトアップされたお城の天守は小さいのにとても立派に見え、池の周りや橋に置かれた灯りとともに幻想的な景色である。
しばらく座っていたが、船着場に戻り、少し並んで舟を待つ。15、6人乗れる舟。船べりに座って船からの景色を楽しむ。暗いので水はとろりとして見える。深さは1.5メートルほどだが、底は泥なのだそうだ。白鳥がすいすいと泳いでいたが当然舟には近寄らない。船着場から、野点茶会をしているところまで5分強。邦楽が始まり、琴の音が静かに聞こえる。この庭が造られてから何百年か経つわけだが、その当時から石は変わっていないらしい。今は彦根市ががっちり管理していてますます石や岩の場所を動かすことはできないらしい。歩いていくつかわたった橋は、ひとつ四千万だか五千万だかしたそうな。竹竿で舟を操るおっちゃんがそう教えてくれた。このおっちゃんたちはそろいの法被を着ている。背中にはもちろん「井」。
再度野点茶会をしているところについて片道おしまい。
また同じところに座って、虫の音に聞きほれる。足元や、道筋にいろんな灯りがあるが、電灯とろうそくの灯りは明らかに違う。ろうそくの灯りのほうがやわらかい。初めて、知った。
さてここ玄宮園の中には宿泊できる場所もある。池に面した「八景亭」である。舟からも、野点茶会の場所からも部屋が見えていた。丸見えである。部屋は5部屋で、70年ほどの歴史があるらしい。もとは井伊家所有のものだったそうだが。一泊二食で25,000円。
帰りは船着場までまた船にのる。今度はさっきとは反対側を通って戻る。優雅な、大名舟遊び。
8時半頃、玄宮園を出た。出る頃には駐車場は車でいっぱいになっていた。近くの旅館からマイクロバスも出ているようだ。
行ってよかった。
今度は、ゆっくり、泊まりで行きたいな。
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