最近、毎日夕方早めに仕事を切り上げなければならない。
午後8時には、お風呂も食事の支度等家事を全て済ませ、麦茶をお気に入りのグラスに入れTVの前に座る。おじじの帰宅は毎日夜中なので、安心して時代劇に没入する。
私は厳かな気分でTVのスイッチを入れ、正座してTVに向かう。これからCMなし48分間の至福の時間が始まる。

時間が許せばこれは1時間繰り上がる。出来れば、7時にTVに向かうのがあらまほしい。
欲を言えば6時、5時でも構わないが、それは我慢、我慢。

今年になって、2月のおサル、5月の吉、又五郎と2回芝居見物に出かけたが、本命ではない。私の本命はあくまでも仁左さまである。吉も大好き、又五郎も大好きだが、仁左さまには敵わない。
欲求不満が高じて仁左さまの本を買ったり写真集を眺めたり演劇界を立ち読みしたりしたが納まらない。ああもう仁左さまを知らなかった頃に戻れないのかアタシは!?
と思っていたらばTVがあった。8時から「お命頂戴!」。主役である。ちなみに7時からの高橋英樹の「旗本退屈男」にも出ている。下っ端の役である。仁左さまを差し置いて高橋英樹ごときが主役とは許せん。それも旗本退屈男!おまえが早乙女主水之介とは笑わせる。しかし仁左さまが出ているので、出来ればこれも毎日抑えたいところ。どうして5時、6時でもよいかというと、5時からは「破れ傘刀舟」の萬屋錦之介、6時からはこれまた大好きな大川橋蔵の「銭形平次」なのである。ま、これは時間が許せば見る。譲れないのは仁左さまの「お命頂戴!」なのだ!
「奥祐筆、内藤左門」と静かに名乗り、悪人をばったばったと切倒し、懐紙で刀をぬぐい、ちゃりーんと刀を納めるところでは毎日のことながら「松嶋屋!」と声をかけてしまう。
このドラマでは板前、盗賊、浪人、渡世人等々あっと驚く十三変化も楽しめる。いろんな仁左さまを見ることができて涎たらたらである。私はお侍さまのお姿が一番好き。でも町人姿でのれんを分けて「よっ。」と入ってくるところもたまらない。どんなお姿でも品があるのはさすが仁左さま。殺陣は、吉の鬼平ほど迫力もないし、当代一と私が思う真田健一郎、また私のアイドル杉良太郎さまたちには及ばないが、それでも腰が決まっててかっちょいい。将軍役に伊吹吾郎。これほどごついガタイの将軍様がいただろうか!?若かりし頃に比べはるかに太って体格に貫禄のついた上様、松平健も真っ青のごつい将軍様である。
「てめぇら人間じゃねぇ、たたぁ切ってやる!」の錦之介もたまらないが、やっぱり仁左さまである。「しんぺぇするこたぁねぇ、安心しておいらに任せな」なんて銭形の親分に切れ長の目で言われちゃったりなんかしちゃったらくらくらと腰が砕けるが、やぁっぱり仁左さまである。
「絵島生島」も好き。初めてTVデビューをしたこの番組の仁左さまもステキ。歌舞伎役者という役どころも面白い。それに歩き方が違うのよねぇ、本当に、画面にどこにいてもすぐわかる。

相変わらず流動食しか許されない私だが、こんなお人と指し向かいでいっぱいやりたいねぇ、と思いつつ、麦茶を飲んでTVに声をかける。「松嶋屋!」

生仁左さまに次回お会いできるのは7月19日。ああ、待ち遠しい。



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