5月25日、京都南座に、「中村歌右衛門一周忌追善公演」そして次男松江の「中村魁春襲名披露公演」に行ってきた。
中村歌右衛門は、私に歌舞伎を教えてくれたおやびんが大ファンの人である。名女形で、怖い役をやらせたら相手役が怖がるというすごい人だったそうな。以前TVで何度か中村歌右衛門を観た。踊りのシーンが主にあり、インタビューは少しだけ、あった。
自分のことを「あたし」といい、綺麗な女言葉を使っていた。
でも直接舞台を観ていないし、やはり、遠い人である。
さて、今回仁左様が来ないのに南座くんだりまで出かけたのには理由がある。
私は池波正太郎の小説が大好きで、勿論それがTV化されたものも大好きである。
中村吉右衛門の「鬼平」、松本白鸚の「鬼平」。どちらもよかった。鬼平だけ観るなら松本白鸚のほうが渋くてかっちょいいが、周りの役者込みで観ると断然中村吉右衛門に軍配があがるってもんである。なんてったっておまさがいい。粂八もいい、彦十もいい、私の大好きな五郎蔵もいい。伊佐次もいい。文句ナシである。渡辺謙の「藤枝梅安」もいい。やっぱり梅安は体格がよくないとね。がっしりしていないとだめだぁね。おもん役もいい。私のイメージぴったり。彦さんも、まぁよし。
でも藤田まことの「剣客商売」。これはアカン。本当にアカン。藤田まこと、デカすぎ。渡部篤郎、体が貧弱すぎ、迫力なさすぎ、三冬役は誰だったか忘れたが、品がないわ美人じゃないわ着付けがヘンだわいいとこナシ、おはるは、まだ許せるが・・・とにかくアカン。許せん。周りを鬼平メンバーが固めていたがそれでもだめ。主役群がアカンとどうしてもアカン。かといって、昔の「剣客商売」も実際観てみたらイマイチだったのよねぇ、大治郎役の加藤剛、確かにイメージどおりだけど綺麗すぎてなんだか物足りない。小説と違って本当に大治郎が主役になってしまっていて、せっかくの兵衛役の山形勲もかすんでいて、あいや小兵衛も悪くはないんだけど、物足りなかった。ま、仕方ない。仕方ないけれど、秋山小兵衛のモデルとなった中村又五郎。どうしても会いたかった。観たかった。
大正生まれの中村又五郎、御年90歳は越えており既に歌舞伎界の最長老。この先何度舞台を観れるだろう?中村又五郎は天才子役だったそうな。大人になってからは脇役が多かったらしい。体が小さく、本当に、小兵衛である。
中村又五郎は昼の部にしか出ない。もう夜の部の演目、配役を見ることなく昼の部に決定。又五郎、待っておれぃ!
今回は土曜日。私一人なら平日に行くのだが同行者の友人カバコが土曜日を希望してるのでそれに合わせる。
お弁当を作り、阪急電車で京都に向かう。カバコは高槻に住んでいるが現地集合。遅刻の多いカバコなのでチケットを前日渡しておいた。忘れ物も多いカバコだが、カバコがもし遅刻したら最初っから観ることが出来ない。悪いが私は待たないぞ。映画やほかの舞台なら待ってもいいが、歌舞伎だけは待ってやらんぞ。
待ち合わせの時間よりも少し早めに到着。待ち合わせの時間過ぎてもあらわれないカバコに電話する。案の定まだ電車の中、遅刻である。む。チケット渡しておいてヨカッタ・・・。メール送って先に入り、写真を購入。仁左様のはないけれど、吉と又五郎のを購入。むふふふふ。
席に着く。前から二列めほぼ中央。
灯落ち、柝鳴り響き 幕あがる。一番、大好きな瞬間である。
と、そこにカバコが来た。本当にギリギリセーフ!
ほっと安心して、舞台を観る。最初の幕は、「元禄忠臣蔵」。
梅玉が豊綱卿、お喜世は福助パンツ、江島が秀太郎、新井勘解由に中村又五郎、助右衛門に橋之助という配役。まず梅玉。こいつが私にはイマイチ。そつがない感じで、器用に役をこなしてたっていう感じで、イマイチ。福助パンツはまぁ、ヨシ。こないだの七変化よりはヨシ。秀太郎、これもまぁ、ヨシ。
忠臣蔵は好きな話である。編笠十兵衛も大好きなので何度も読んだものだ。堀部安兵衛も好き。よしよし。
短い間があり、中村又五郎の場である。幕が上がったとき既に彼は舞台のやや左寄りに座っていた。本当に小さい。オペラグラスで観ると耳に補聴器をつけて肌色のテープでとめていた。ああ、中村又五郎、又五郎だ!そう思って拍手をしかけたが、誰も拍手しなかったのですぐに手を止めてしまった。どうして手をとめてしまったのだろう、私。誰も拍手しなくても私一人でもすればよかった。この先中村又五郎の舞台を観れなかったら、私、一生後悔するかもしれない。
中村又五郎は梅玉に比べ声が小さかったが、それでも、はっきり発音していた。殆ど横顔で、品のいい、綺麗な高い鼻が印象的だった。目は少し濁っており、やはりトシを思わせた。しみの浮き出た手だったが、すっきりとした指は上品だった。
あっという間に又五郎、終わり。これだけ?これだけ?手が赤くなるほど拍手をしたが、物足りないよお。座ったままの又五郎。動いてるところを観たいよぉおおお。
次の間では橋之助。んまーコイツうるさい。声、でかいのはいいけれどでかすぎ。うるさい。元気いっぱいの役だからいいんだけどそういう役だからいいんだけど、あんた結構顔デカイのね。最後槍を振り回すシーンではボロボロ。全然キレのない動きになんだか興ざめしてしまいました、アタクシ。
橋之助ファンのカバコは大喜びしてたけれど、橋之助、私を唸らせるには20年はかかるわね。
30分の休憩。ここでお弁当を食べた。私の作ったお弁当をカバコは綺麗に食べてくれて、満足、満足。コーヒーを買ってきて飲む。
次は舞で、玉三郎と鴈治郎。玉三郎を観るのは初めて。
最初が「鐘の岬」で玉三郎。ほんまに綺麗。綺麗だけど、おでこのしわが気になる。綺麗だけど、あんたは仁左さまの相手役をよくやったのよね。許せん。許せんぞ。許せんけど綺麗。足捌きが綺麗。腰が細くて動きがなめらかで綺麗。でも・・・確か、これを歌右衛門が踊ったのをTVで観たことがある。彼のほうが、鞠をつくところが綺麗だった。本当に丸く見えた。玉のはまん丸には見えなかった。でも、綺麗。姿がいいのね、この人は。
続いて鴈治郎!なんだか鴈治郎をみるとほっとする。安心して、観ていられる。綺麗な玉の後だから鴈治郎可哀想と思ったけれどいやいやどうしてどうして!なんだか可愛く見える。大太鼓のようなおなかのせいか?でも鴈治郎、あんたにあえてよかったよ。今回も何度か視線があった。私のこと、覚えてくれてるのかな?でも目玉比べ挑戦はしてこなかった。忘れたのかな?一人だけ目をひんむいてもしかたないので今回はしなかった。
20分の休憩。カバコ、南座探検に出る。
次は口上。前回三津五郎の襲名で初めて口上をみたが面白かった!裏ネタ暴露とまではいかないけれど、ワイドショーでも有名な三津五郎、なかなか周りも笑わせてくれて盛り上げてくれて、苦笑する三津五郎も見れて面白かったので今回もそのデンだろうと思ったのだが・・・今回はまじめ一方な口上だった。芝翫が紹介し、次々と役者が話すのだが、右端に鴈治郎、又五郎。左端に吉。んもー、両方見るのは大変!前回は真ん中に鴈治郎、右端が吉、左に仁左さまだったのでもっと大変だったが芝翫みてもしゃぁないし、魁春観てももっとしゃぁない。吉よりも又五郎が気になる。というわけで、左の吉が喋る以外は誰が喋っててもひたすら又五郎をオペラグラスでおっかけていた私だった。周りの客席がみんな左に注目してるなか、私だけ右向いてる図はおかしなもんだが観たいものは観たいのである。どっちを観てるんだ、とばかりの舞台からの視線も何度も感じたが、知るもんか、あたしゃ又五郎を観ていたいんだい!!
みんな歌右衛門の思い出話、堅苦しい話をしている中、又五郎だけがほのぼのした話をした。ある舞台で、差し入れの饅頭を、歌右衛門と又五郎は毎日食べていたのだが最後は飽きてしまった。「シュークリームが食べたいねぇ」と歌右衛門が言ったのだそうな。あんたはおじじか!?私も笑ってしまった。
20分の休憩。
さて「本朝廿四考」。これは私が初めて歌舞伎見物をしたときも見た演目である。あじまじろちゃんとおじじと3人で、おやびんからのチケットのプレゼントである。
思い出しつつ、舞台を観る。魁春が八重垣姫。綺麗じゃなーーーーい。勝頼が芝翫。似合ってなーーーーい。あまりにつまらないので福助パンツを目で追っていたが、あまりに退屈さに、私、眠ってしまいました、ハイ。
あまり長い時間ではなかったと思うのだが、確実に眠りました、ハイ。隣のカバコ、爆睡しておりました。吉が出てきたら起こしてやろうとそのままほっとくことに。それにしても眠るとは思わなかったなぁ・・・。眠りから覚めたとき、しっかりはっきり、芝翫と目が合いました。ありー。ごめんね。私にはまだ難しいのよー。
その時笑い声がして吉登場!
カバコを起こして舞台に集中。あああ、頭ハゲてるよ、耳毛ボー、だよ。
でも吉が出てきたらほっとした。面白い面白い。鴈治郎も出てきたがあっという間に退場。これだけかーい。
そこから舞台はあっという間に終わった。
あー。物足りない。
その後カバコの案内で、先斗町をうろうろして、お茶して帰った。
次は7月、仁左さまよーーーー!!
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