2月8日、今年初の歌舞伎見物。
仁左さまが出てないから、止めようと思っていたのだけれど12月に京都の南座にいって気が変わった。
とにかく歌舞伎見たい!誰でもいい!
あいにく1月は間に合わず。新之助、観たかったなー。ということで2月のおサルに決定。

市川おサルのイメージといえば宙吊りのスーパー歌舞伎。
今まで観たことないし、多分、今後もみないと思う。
がしかし、今回の夜の演目は普通の歌舞伎だから、実力者といわれるおサルを観ておくのも悪くはない。

今回は一人で観にいく。いつも一緒の美也子たんは第二子妊娠でつわりがひどいらしい。仕事先の子は今は忙しい時期でとてもじゃないが会社は休めないという。仕方ない。たまにはよかろう。
気分を変えて着物でいくことにした。お正月、実家に帰った時、振袖と喪服以外、大阪に持ってきたのだ。それに最近、仕事先の近くにリサイクルの着物屋さんができて、殆ど毎日顔をだしてるせいか、よいものが入ったら店長が教えてくれるのだ。バーゲンもあって、新品の草履を買った。着物も格安のものをGETした。が、今回は、元兄嫁のために私の母が手縫いで作ったアンサンブルで行くことにした。くすんだピンクとくすんだ紫の市松で、ところどころ蝶々が飛んでいる可愛いけれど落ち着いた感じのものである。元兄嫁は離婚したときも着物は持っていかなかった。母があの人のために何枚も作ったのに全部おいていった。おかげで全部私のものになったのだが、元兄嫁はとにかくデカイ人だったので、着物も丈がすごく長い。170cmを越える身長だったので、本当に、私には大きいが、それでも着てやるぞ。着物とは便利なものである。兄は再婚し、また新しい嫁のために母は着物を作った。これも手縫いらしい。が、できた途端、ちゃっかり持っていったらしい。もし離婚することになってもあれは私の手には入らんな。ちっ。今度の人は私とほぼ身長が同じなのでちょうどよい、しめしめ、と思っていたのだが。
帯は年明けに義母に買ってもらった黒い半幅。結びも簡単にし、髪も適当にまとめて出来上がり。アンサンブルの上にショールをひっかけて、夫の夕食の支度も済ませていざ出陣!


席は、いつものようにかぶりつきのほぼ真ん中。本当にいつも良い席をとってもらってありがとうございます。>美也子たんのお母様。
右隣は年配のおばちゃま。左隣は微動だにしないおじいちゃま。後ろも静かで、今回はよいぞ、よいぞ、よいぞ!
番附を買って席について、周りを見回す。7月に私が上がった舞台。あー懐かしいー。なんにもない舞台に私とオッチャンが乗った舟だけがあり、とてつもなく広く見えた舞台。役者さんや、舞台関係者にはいつもの一日だっただろうけれど、私には一生に一度の思い出である。

始まった。
舞台には何人も役者さんがいたが、美形がいない。役者さんとは殆ど視線があった。私やっぱり目立つのかしら。着物で来てよかった。これなら7月の仁左さまの舞台でもきっと仁左さまといっぱい視線があうに違いない。と、おサルが出てきた。チャリッという音がして花道を悠々と歩いてくるが拍手がない。おお?本当に拍手がない。声もかからない。おおおおお?そんなものなのかな。私だったら、出てきたのが仁左さまだったら手のひらかゆくなるくらい拍手するのに。誰も拍手しない。あんたらファンじゃないの?ここにファンはいないの?
おサルは、確かに、下手ではないとは思ったが、私はファンにはならないだろうと思った。たとえば鴈治郎は、最初はなんて丸い人だ、と思って、ひいきにはしていなかったが、二度目に観た舞台は素晴らしく、それからの舞台は全て期待を上回る場面を見せてくれて、今ではすっかり贔屓である。腕は短いし、その役は仁左さまにしてほしい!という役をすることもあったが、それでも許す。一番よく視線のあった人だが、その度、私に目の玉大きさ勝負を挑んでくるのもよろしい。目があった途端、目をひんむいてくる。私ももちろん応戦している。それでも鴈治郎は勝負を挑んでくる。さすがおやびんが贔屓にするだけはある。がしかしおサルは鴈治郎のように私の贔屓にはならないだろう。・・・鴈治郎、元気かな。
舞台は次々と変わる。幕がひかれ、花道で役者さんが大立ち回りややりとりをしている間にセットが変わるのだ。花道も確かに舞台の一部ではあるけれど、真横や後ろを見るのはしんどいので、最初だけ見て、あとは舞台の幕や番附を見ていた。
市川右近が出てきた。最近離婚したという人である。声は大きい。動きも結構きびきびしているが、でも、顔がやたらでかく首がない。問題は手である。女の子みたいなぷにぷにして可愛らしい手をしている。これはアカン。まったくもってアカン。こいつだけは許せん。左目にごみが入ったのかやたらとウインクをしている。これも見苦しい。つくづくアカン。何度も目があったが、全然うれしくならなかった。おまけに裾をからげたとき見えたのが、横綱の化粧まわしのような褌(?)。フリルのついた褌をみてもう笑いが止まらない私。何故ここで笑われるのか?と右近は私をみて不思議そうな感じだったがそんなこた知るもんか。これからずっと右近は私の中では「フリル褌」男である。

それにしても私、今回はとても冷静である。仁左さまが出ないというだけでこんなに冷静になれるものなのか。自分でも驚いた。

話はどんどん進んでいく。岩藤の骨が散らばっているシーンでは、周りがくすくすと笑っていた。なんとなく怖い雰囲気になってきたのでわくわくしていたのだが笑い出すとは何事だ。途端に気分もさめていった。骨には蛍光塗料でも塗ってあるのか?暗闇でもぼうっと光っていた。ドライアイスをふんだんに使う舞台で、かぶりつきの私は何度かドライアイスまみれになった。今回、席にすわっているととても寒かった。いつもは冬でも半袖でも大丈夫なくらいなのだが、とても寒くて、アンサンブルの上着は脱いでいたのでショールを首にぐるりと回して舞台を観た。
又助の弟役の子供は琴を本当に弾いていた。琴爪を丁寧につけてるなぁ・・・とは思ったのだが本当に弾くとは思わなかった。おかげでまたまたおサルが長い台詞をしゃべっていても目がいかない。あの子はすごい。
岩藤は幽霊である。なので空を飛ぶ。おサルは2度空を飛んだ。あのトシで宙吊りになるなんてすごい。しかしうらやましい。私もあんな高いところにあがってみたい。宙吊りでもいい。しかしこのときも拍手はそんなになかった。声は時々かかったが、拍手は驚くほど少なかった。少なかったし、私の周りではいつまでも首を回して宙吊りの姿を見続けた人は少なかったように思う。2階席、3階席の人達へのサービスなのだろうか。
最後の最後まで、早変わりや、おおがかりな立ち回りだった。若い男の人達がくるくる回り、くるくるひっくり返り、はしごに登って逆さづりになったり、おサルを持ち上げたり、走り回ったり、みんなで縄をなげてくもの巣のように網を作っておサルを乗せて回したり、いやはや、大変なものである。くるくる回る男の人がすごくて、初めて、拍手をした。そのとき、おサルと目があったのだが、しばらく視線は合ったままだった。かぶりつきなのに冷めた顔した着物の私、目立ってたのかしらん?拍手せんかい!と、目障りだったのかしらん?
おサルはほぼ出ずっぱり。たいしたものである。しょっちゅう着替えていろんな役をやって。これまたたいしたものである。通しとはいえ、ほぼ出ずっぱりなのはえらい。今回夜の部を観たが、昼の部でももちろん同じだろう。ずうっと出っ放しなのだろう。えらいぞおサル。すごいぞおサル。ああ仁左さまのこんな舞台観たい!ずうっと仁左さまが出っ放しの舞台を観たい!

おサルの印象はすごかったが、でも、ほかの役者さんの印象が殆どない。右近は少し前にTVで離婚のインタビューを見ていたから覚えていたようなものの、本当に、ほかに強い印象に残った人がいない。仁左さまの時はいつもほかによかれあしかれ色んな人の印象が残るものだが。これってどゆこと?私が冷静すぎたのか?それとも・・・

最後の最後に驚いたのは、もう、幕が引かれる、もう終わる、と思った瞬間、おサル始め役者さんがみんな座り、頭を下げ始めたこと。頭をあげ、一階席、二階席、三階席、観客を順々に見回す。両手を挙げて、見回して、そしてもう一度頭を下げて、幕が引かれた。
みなポーズを決め、それが固まった絵のようになり、そこに幕が引かれるのがいつもの終わり方だったので驚いたが、このときは素直に拍手できた。なんだかこの最後には感動してしまった。お疲れ様。おサル。

次は5月の南座だ!行くぞ、アタシは!!



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