またまた会いに行ったわさ、仁左さま、仁左さま、仁左さま。
今度こそ、仁左さまの視線をがっちりつかむのよ!と勢い込んで行ったわさ。

今年は3度め。ああなんていい年なの。
だけど仁左さまが松竹座に来るのは今年はこれで終りらしい。
はーーーーーーーーー。なんで関西出身のくせに関西を大事にしないのっ。
東京まで観に行くしかないのかなーーーー。

今回は夜の部。
演目が決まってからおうかがいを立てるおやびんと、美也子さんのお母さま、お二人とも揃って、「今回の仁左は美しくない・・・けど観るなら夜のほうかなぁ?」ということだったので、夜。いつも昼間だったからちょっと気分が違う。
朝から片づけしてお弁当作って、でもってパックまでしちゃって、普段は絶対つけないマスカラまでしちゃって、お気に入りの水色のワンピース着て、準備万端整えいざ出陣!
しかし暑い〜。
とける〜。
会場には4時前に着いたのだけれど、なかなか入れてもらえない。てやんでぃ、さっさと入れろっ!
今日は美也子さんってば、胸元の超セクシーなワンピース。ううむ、やるわね、これで仁左さまの視線を釘付けにしようってのね。きぃっ。そして美也子さん情報。先週美也子さんのお母さまが夜の部を観た時、最初の演目「歌舞伎の魅力」てなものがあって、そこでなななんと、観客の中から男女一人づつ、衣装を着せてくれて舞台にあげてもらえるという、素晴らしい企画をきいた。関西歌舞伎を愛する会発足10年の記念の年なのでこういう企画が立てられたらしい。お母さまの時も立候補者が少なかったそう。運がよければ私も舞台にあがれる!もしかしたら楽屋の仁左さまに会えるかもしれない!!
会場に入ったら化粧を直すぞ、と誓いを立ててさて入場。4時15分までちょっとしかない。番附を買って席に着くとすぐ始まってしまった。アイヤー、化粧直してないアルよーーーー。

翫雀さんが登場。袴をつけて、なかなか男前じゃないの。私、どうも袴の人に弱いのだ。最初は花道の説明。花道七三というけれど、八二か九一だとか。思わず笑ってしまった。花道のすっぽんのことや、チャリッと音がすると必ず誰か出てくる、とか・・・花道に立って説明してた翫雀さんが舞台中央に来た。そう、私はかぶりつきのどまん中。まん前に翫雀さん。絶対選んでもらうわよアナタ!と気迫を込めて見つめる私。さて、観客の中から男女お一人づつ・・・と言い出した途端、私の右手は軽く上がってしまった。慌てて手をおろすと翫雀さんと目があってしまった。改めて、「さぁどなたか・・・」と言ったので今度は堂々と手をあげた。私、私、私を選んでっ!!!男性は一人だったが、女性は3人いた。ここで勝負はジャンケンの神様に委ねられる。だめだ。私はジャンケン弱いの。だけどこの先一生ジャンケンで負け続けてもいい、今、この勝負、勝たせて〜〜〜〜。
私の他はオバチャンと若い女の子。最初の勝負でオバチャン敗れ、次の勝負でお姉ちゃん敗れる。
勝った、勝った、勝ったああああああああああああああああ!!!
嬉しくなって、美也子さんと歓声をあげたいのを我慢して、お弁当と荷物を美也子さんに預けて舞台にあがる。
いいの?いいの?靴のまんまでいいの?階段は細く、階段と舞台のつなぎは一段高くなっていて私の服と靴ではよろよろしながら跨ごうとしたら翫雀さんが手を差し出してくれました。冷たくて、柔らかい手。私の手、だいたい冷たいほうなんだけど、もっとひんやりしてました。ああっ、これが仁左さまならよろけたフリして抱きついていくのにっ。(こう言ったらおやびん、「仁左さん、九死に一生を得たでちね・・・」ですって。失礼しちゃうわっ、ぷんっ)
立候補した男性は結構なおじいちゃん。中学の時から歌舞伎みてますわ、と、えらいおしゃべり。おじいちゃんから先に名前を言ったり、どこから来たかなど聞かれて、次は私。背中に軽く手をあてられた。私が緊張して震えてたのがわかったかな。かぶりつきの美也子さんが見える。ああ、かぶりつきでもあんなに小さい顔。松竹座ってなんて大きいんだろう。今まで特に大きい劇場と思ったことはなかったけれど、3階席の奥まで見えるこの場所にいたら、いくらかぶりつきでも仁左さまから見て私はなかなか視線に入らないわ。・・・でも負けないわっ。などと思ってたらいざ退場。着替えのため、舞台下手から地下に降りていく。
着替えの場所は狭い階段を降りて左に折れてる通路の左にある小さな部屋。入り口で靴を脱ぎ、カーディガンを脱いで渡す。鏡はなく、奥で男性が花魁になり、手前の部屋で私は御所五郎蔵の衣装をつける。私は後ろと前に2人の男性、花魁のオッチャンは女性一人と男性二人の三人がかりで着付けてゆく。私の前から着せてくれる人は「お?着物、着慣れてる?」と声をかけてくれた。そうなのよーーー、最近着付けの練習を毎週やってるからねーーー。むろん自分一人で。まだちゃんと着れないけど少しは役に立つのかな。うひひ。
最初に足のつけ根より少し長いくらいの真っ赤な下着をつけ、昔のせんべえ布団のような着物を着て帯をしめておしまい。あっという間に終わったが、オッチャンの花魁はまだ出来上がらない。何枚着るんだ?先に着付けが終わった私はスリッパをはいて部屋を出て写真撮影。これまた廊下にゴザが敷いてあり、中央にバツ印があり、そこに刀をさしてもらった私はスリッパを脱いで立つ。尺八を持たせてもらい、立つ場所、カメラにむかう角度、黒子の衣装のおじさんの言う通りにして、手を刀にかけてパシャッ。
続いて花魁のオッチャン。着替えてる途中から「かつらは?化粧は?」と何度も尋ねていた。かつらも化粧もないのさ。後ろから着物を持ってもらい、上にもう一枚羽織ってパシャッ。
これは終わってから渡されるらしい。舞台の写真はないとその時聞いた。あー、それにしても裏方には女性がいるのねぇ。
写真撮影した右手奥に、何やら床にテープで絵が描いてある。どうやら舟をかたどったものらしい。私らは舟で登場するので、座る場所、立つ場所、合図をしたら、1、2、3で呼吸はかりながら、目線は右、中央、そして見つめあう、と教えられる。ふむふむ。ヨシ。
裏方のオッチャン達はいすを私らにすすめて、どこかにいってしまった。
残された私らはおしゃべりしながら出番を待つ。1、2、3で見つめあう練習もしたりした。頭上から翫雀さんの声が聞こえる。ここは、舞台を地上1階とするなら地下1階くらいのところ。私らも話聞きたかったねぇ、とまたおしゃべり。「カツラ絶対必要やわ。口紅もほしいわ」オッチャン、似合わないわよ・・・ハゲてないからまだいいけれど。すっかりその気になってるオッチャンが面白かった。それにしてもようしゃべるオッチャンだ。その時私らは、花道のすっぽんから出るのかと思っていた。この大きさの舟ですっぽんから出れるのかな?舟は違うのかな?私らはどこから出るんだろうと二人とも不思議だった。
さて出番。さらに階段を降りてゆく。
男性が花魁になったわけがわかった。着る着物の枚数が多いし重たい。これで階段をさっさと降りるのは、女性だったらしんどいわ。そうか、なるほど。オッチャンは苦労しながら、私は身軽に階段を降りてゆく。これで地下2階。
回り舞台がある。大きい。さっき名前きかれてる時に足元に回り舞台の境界線がくっきり見えた。あれの下に、今、私はいるんだ。
当たり前だけど暗い。足元を懐中電灯で照らしてもらいながら下手に移動する。花道じゃない!舞台中央だ!!中央のセリなんだ!!
そこでまたしばらく待った。オッチャンはまた裏方の人に話しかけている。
回り舞台が回り、舟が見えた。オッチャンが先に乗り込み、また上着を着る。私は手を貸してもらって舟に乗り込む。私は立ったまま。
ここにも女性がいた。「緊張しますぅ〜」と言ったら優しく笑ってくれた。
舟が一階分くらい上がった。ここでまたしばらく待つ。翫雀さんの声は聞こえるけれど、何を言ってるかわからない。聞こえる距離のはずなんだけどよくわからなかった。
さぁいよいよ登場だ!!
ゆっくりセリが上がり、ゆっくり観客席が見え始める。アカン、笑ってしまうっ。
そしてすごい拍手!拍手!拍手!ライト!なんてまぶしいの、なんて拍手なの。
かーーーーーーーーーっ、気持ちいいっ。
感動しました。これはすごい。すごい。すごい。
翫雀さんがまた何か喋って、それから、後ろの黒子さんの合図で、1、2、3・・・で見つめあう。さらにまた拍手!
翫雀さんが近寄ってきてくれて、感想など聞いてくれた。ライトがまぶしかった。美也子さんがこっちをみてる。何度も目があって、何度か手を振ろうと思ったけれど尺八持ってて振れなかった。
そして退場。退場は舟を下手からずるずると引っ張ってもらうらしい。揺れる揺れる。私はふんばって立つ。コワイ、コワイ。オッチャンに「さ、見つめあうでっ!」と言われみつめあう。観客席から笑う声が聞こえる。ずるずる引っ張られ、下手に退場。
花魁のオッチャンが苦労して立ち上がり、何人もの人に助けてもらって舟を降りる反対側で私は舟を降りようとした。そしたらそこに立ってた若いにいちゃんが手を貸してくれた。みんな優しいなぁ。手は暖かかった。ひんやりと冷たかったのは翫雀さんだけ。衣装を脱ぎにいく。今度は部屋などと呼べるものではなく、空いてる空間に布を広げただけ。そこにスリッパを脱いであがり、また前と後ろから帯を解いて着物を脱がせてくれる。あー、なんかこういうのいいわねーーーー。私が脱ぎおわると、着物を広げてあった布ごと丸めて誰かが持っていく。そして花魁のオッチャンも同じ。預けてあったカーディガンを受取り、靴を履く。劇場の人なのか、今度はスーツを着たオジチャンが、ポラロイド写真と、翫雀さんのてぬぐいをくれた。きゃー、嬉しい〜。そして私らはおしまい。嬉しくて私はそこにいる人達に「ありがとうございました、ありがとうございました」と米つきバッタのように頭をさげた。
服を脱いだところのすぐ横の扉はロビーに通じており、オッチャンは「トイレ、トイレ」と言いつつ、スーツの人に案内されていった。私はロビーに出て、また席に戻るため入り口向かって小走りに歩いてたら、2、3人のオバチャンに声をかけられた。「綺麗だったわよ〜、あら、お化粧、もう落としたの?」「いえ、お化粧はしてないんです。」「んまーーー、してるように見えたわよっ」
後ろの扉から入り、かぶりつきの自分の席に着くまでにまた4、5人の人に声をかけられた。「よかったわよ〜」「あ、あの子ね、ねぇねぇ、綺麗だったでぇ」「楽屋で誰かに会うた?」などなど。お礼を言ったり、誰にも会わなかったことを言ったりして席に着く。美也子さんに写真をまず見てもらってたら斜め後ろのオバチャンが「写真見せてぇ〜。日本舞踊やってるの?立ち姿がえかったわぁ」「いえいえ、したことありません。」などなど、えらく誉めてもらえて嬉しかった。ああ、誰かオバチャンに言われたけれど、13日の金曜日だけど今日はええ日やわ〜。

そして休憩時間になる度、いろんな人が誉めてくれて、なんだか嬉しかった。遠くの席からわざわざ言いにきてくれたりするのだ。嬉しいわ〜。今回私らの両隣はおじいちゃん。私の隣のおじいちゃんも「立ち姿が決まってた。よかったで」と誉めてくれたのもまた嬉しかった。本当にええ日だわ。美也子さんありがとう!翫雀さんありがとう!ジャンケンの神様ありがとう!親切にしてくれた裏方のかたがた、ありがとう!拍手してくれた観客の皆様ありがとう!誉めてくださった人達みんなありがとう!
万歳、関西歌舞伎を愛する会!!弥栄えあれ!


あっという間の休憩も終り、いきなり仁左さま。
いきなりよろよろと出てきた仁左さま、ああ、こ汚い姿だけどやっぱり美しい〜。
必死で視線をつかまえようとするのだけれど、うつろな目をした仁左さま、視線が定まらなかったり下向いてたり。どうしてこないだからこんな役ばかりなのかしらっ。
染五郎と弥十郎が出てきた。染五郎、なんだかハッキリしない役である。見ていてイライラする。
私の場合最初の役所が結構イメージを決めるものである。だから鴈治郎は雪姫の美しい姿を見たのに、やっぱり白ダヌキ。
というわけで染五郎も、なんとなくハッキリしないヤツに見えてしまうのである。もともと顔だって好みじゃないのよ。
それはともかくやっぱり仁左さま、すてき。足が長い、肩が広い、指が長い、手が大きい。もう何もかもがステキ。
ああーーー、美しい仁左さまを見たいーーーーーーーーーーーーーーーーー。
孝太郎登場。面白い。顔はアカンし、姿もアカンけど、この人、声はいいと思う。名前を呼ばれて「あい、あーいーー」と返事をするのもこの人の返事が一番すき。
次に登場した左団次、頭にンコつけてるし、髪の毛はルイ十六世。これでもか、というような悪役。
橋之助、なかなか綺麗。思ったよりも綺麗。足、細い、む、生意気。声もなかなかいい。
乗船を断られた千鳥のために俊寛が必死に瀬尾と戦ってるのに成経は舟からのほほんとみてるだけ。こらー、おまえの女房だぞ、おまえが戦わんかーいっ。それに千鳥、おまえもおまえだ、おまえがおらなんだら俊寛は舟に乗れてたのにっ。いらんことしぃな夫婦だっ。あんた達、覚えてらっしゃいっ。と、なんやかんや言いながらしっかり感情移入していく私。
案の定、仁左さま以外の人とは何度も目が合った。ううーん、仁左さまのほうがいいんだけど、私。
この幕で3度ほど視線が合った。八尾の友達に買ってきてもらった新しいオペラグラス大活躍!
舟は去り、残された仁左さま、海のかなたに絶叫する。のたうちまわる仁左さまのすそが乱れたらついつい見てしまう私、これってミニスカートのねえちゃんを見るオッチャンと同じかも・・・。だけどステキなのよー。仁左さまー。ああ、どこから見てもステキーーーー。回り舞台の効果抜群、岩を上って松の枝を折り、仁左さま大奮闘。下から観る仁左さまもステキ。あの必死の形相で見つめられたいっ。

休憩。ああ、これで仁左さまとは今年はお別れになるのかしら・・・・・・。
お弁当食べつつ、デザート食べつつ、ちょっと悲しい気持ち。仁左さま、もっと見ていたい〜。

あっという間に休憩終り。
そろそろお尻が痛くなってきたぞ。
次は福助、パンツだ!

南北モノというから、おどろおどろしたものを想像してたんだけど全然違った。
ところどころ笑わせてくれて、面白かった。それにしてもこのお染は長かったー。すっかりお尻が痛くなった。整体の牛五郎先生に足を組んじゃだめ、と止められてるので足も組めないし、しんどかったーーー。
何度も役が代わり、姿を変え、本当に楽しめた。あっという間にお染から久松、久松から竹川、くるくると姿が変わる。役柄が変わるたびに私が「あ、パンツ」と言うので美也子さんその度に笑ってた。だってフクスケといえばパンツでしょー?パンツが一番似合ってたのはお六だったように思う。久松、あれはアカン。あんなひ弱なオトコに誰がついてくもんかい。
染五郎の喜兵衛は、私はイマイチだった。やたらとすごんでみせて大声を出して肩をいからせてるんだけど、なんだか、ひよこが頑張ってるように見えるのである。キミ、まだまだだね。舞台中央ですごんでみせても私はどうも染五郎に目がいかない。隅っこで小さくなってる吉弥か、パンツ(福助)に目がいってしまうのだ。
それにしてもパンツは背が高いしすっきりしてるから、かっこいいなぁ。でも踊りはあんまり得意じゃないのかしら?
今まで舞台で観た中では鴈治郎、そして次は菊五郎が踊りがヨカッタ。パンツ、まだ若いからかなぁ?
ところで橋之助や翫雀さんはどこで出るのかと楽しみにしていたら最後の最後だった。何故か橋之助、女役。それも猿背負ってるし。もうおかしくておかしくて笑ってしまった。隣の美也子さんも大受け。
橋之助の女役、これはイカン。全然綺麗じゃなかった。男役だと綺麗なのに、残念。
翫雀さん、この役では可もなく不可もなし。もっとゆっくり観たいなー。


帰り、飲みにいこうと思ってたんだけど私が土曜日仕事になったので残念ながらナンバでばいばい。
今度は飲みにいくぞ!行こうね、美也子さん!
それにしても仁左さまが途中であるとだめだ。そこで体力使っちゃって、残りの幕がとてもしんどい。今日は途中から本当にしんどかった。でも楽しかった。こんな経験、一生に一度だけ。嬉しかった。

最後に最後に、もう一度、関西歌舞伎を愛する会、ばんざーーーーーーい!!



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