4月6日、また仁左さまに会いにゆく。
この日のために毎日頑張って仕事をしてるのだ、私は。

最近どうも体調がよくなく、したがって気持ちもスッキリしない。
幸い私は仕事仲間に恵まれていて、みんな、「仁左さまに会ってスッキリしといで〜」と気持ちよく言ってくれた。
やれありがたや、ありがたや。週明けからはまた頑張るからね!心配かけてごめんね、みんな!
いつも席を取ってくれる美也子さんも風邪が治りきらないらしい。
一人でも観れるけれど、でも、観た後で「よかったねぇ、綺麗かったねぇ」と言い合えたらもっと嬉しい。治ってくれ、元気になってくれ〜、と祈っていたら、前夜電話があって「行くわよぉ!」と嬉しい言葉。あんまり嬉しいので「アタシお弁当作っちゃう〜」と叫んでしまった。

さて当日、朝、夫と自分と美也子さんのお弁当を作る。デザートに、梅田の大丸で極楽プリンを買って、なんばへ向かう。
到着した美也子さんと、のど飴を買って、松竹座に入る。

番附を買って席に向かった。最前列。かぶりつき!!美也子さんがまん中に近い席を譲ってくれた。ありがとうありがとう。何がなんでも仁左さまと視線を合わせたい私、遠慮なく席についた。右隣はまだ来ない。ああ、仁左さま、仁左さま!
そういえば今回は三津五郎の襲名披露でもある。ワイドショーでしか観たこたぁないが、三津五郎は嫌いではない。
でもあくまでも私は仁左さまがお目当てである。口上を観たことがないので、一度くらいは観ておきたいとは思ったが、昼の部のほうが仁左さまの役が良いらしいので昼の部にした。ああ、返す返すも仁左さまの襲名披露に行けなかったのが悔しくて残念でたまらない。あの頃はビンボーだったのよねぇ・・・・。私も襲名グッズ欲しかった。三津五郎のはいらない。

一幕目が始まった。この話は割と好きである。おやびんお気に入りの鴈治郎が梶原だった。うーん。私は前回以来かなり鴈治郎を贔屓にしているがこの役はアカンと思う。芸がどうこうではない。鴈治郎は腕が短いのだ。あの腕で銘刀を振り被ってみても決まらないのである。ただそれだけなのだがお侍さま大好きの私はやっぱり許せない。ところでさすが最前列。鴈治郎とも他の人とも、何度も何度も視線が合った。もう、ええっちゅうねん!!というくらい合った。うっふっふ、これなら仁左さまとも確実に視線が合うことであろう。うっふっふ。
隣の二人組が遅れて席につく。オバチャン達である。このオバチャン達かなりうるさい。最前列で、役者さん達に聞こえるぞアンタら、というくらい喋る喋る。一言文句言いたいが我慢、我慢。
それにしてもこの梶原の役を仁左さまがやったらどんなに美しいお侍さまになることか。仁左さまのお侍姿が観たい!観たい、観たいぞアタシはっ!!

さて休憩。お茶を買ってきてお弁当を広げて食べる。
デザートを食べてる途中で開演になってしまったので大あわてで片づけて舞台を見る。

尾上菊五郎、菊之助親子共演の「二人道成寺」である。んまー・・・菊五郎の色っぽいこと・・・・。
余談だが、私は以前「菊五郎」と名づけたキャンベルを飼っていた。すっきりした男前だった。2歳半くらい生きて旅立った子だが、この子を命名した時某MLで「若手なら菊之助にすればよかったのに」と言われたことがある。もともと菊五郎と名づけたのはとある小説から取ったのである。歌舞伎役者で幻の二代目の尾上菊五郎。この話がすっかり気に入って、悪者なのだが菊五郎が気に入ってキャンベルに名づけたのだが、「若手で男前の菊之助」は気になっていて今回楽しみにしていたのである。しかしダメだ。私は父ちゃんしか目に入らない。私にとって好みの顔だちではないこともあるが、菊之助にはとんと目がいかなかった。菊之助が一人で踊る時は後ろの三味線の人の撥ばかり観ていた。勿論オペラグラス使用。菊五郎、良かったわ〜。美也子さんは菊之助ばかり観ていたらしい。
相変わらず隣のオバチャン達はうるさい。
「あれ親子やねんて」・・・知っとるわい!
「お母さんによう似てはんなぁ、まぁ大きくなって」・・・アンタは親戚か!
「最前列に座って、やっぱり汗まで見えなアカンなぁ」・・・甘いわ、オペラグラスで毛穴まで見るんじゃ!!
靴を脱いで足をひろげて座って、んまぁ見苦しいことこの上ない。足を組むなとは言わないが、かなり見苦しいぞ。頼むから私のバッグを蹴らんでくれ。しかし我慢。我慢。
菊五郎が舞台からてぬぐいを投げた。残念ながら私のところには飛んでこなかったが、その後所化達が投げ始めた。美也子さんには「あの人らからやったらいらんわ」と言ったものの、おっちゃんと目があったので両手を出したらすんなりくれた。美也子さんにも投げてくれた。二人ともGETして満足、満足。

そして休憩。プリンを食べ終えて化粧直しに立つ。気合い入れて直してたら美也子さんに笑われてしまった。だけどね、仁左さまなのよ!いよいよ仁左さまなのよ!!!!!!!!!

「これには面白い涎くりが出る」と美也子さんが教えてくれた。本当に美也子さんは詳しい。さて舞台は寺子屋で、子供達が何人かいるが、子供に扮して大人がいる。あ、なるほど、あれが涎くりね。
そして仁左さま登場!!!!
あああ〜っ、なんと美しい姿。もう何から何まで美しい、よろしい。しかしやたらと下ばかり向いてる。そういう役なのだから仕方がないが、私と視線はあうかしら。もう、もう仁左さましか目に入らない。仁左さまのことしか考えられない。
でもなかなか視線が合わない。下ばかり向いている。客席自体、殆ど見ない。そういう役柄なのだから仕方ないのだけれど、追っても追っても振り返らない、ますます私は追いかけてしまう。ああこれは恋愛の法則と一緒だわ。ますます目が離せない。一瞬たりとも油断できない。ちらとでも目を上げるのではないか、そう思うと周りの人も舞台装置も目に入らない。仁左さまから目が離せない。

仁左さまは舞台で3度泣いた。本物の涙だった。青いはんかちで涙と鼻を拭いていた。あれ欲しいっっっっ。洗わんでええからあれ欲しいっっっ。家宝にしたいっっ。
涙も美しかった・・・一幕目のおっちゃんは涙に見せかけた汗だったが、仁左さまのは本物である。

着流しの美しい姿で、座ってよし、立ってよし、動いてよし止まってよし。

何をしても美しく、華がある。
相変わらず下ばかり向いているが、ああもう、足の裏まで(見えたのさ)美しい〜〜。
源蔵(仁左さま)が菅秀才を上手の部屋に隠す時、ちらりと振り返り、その時、視線が合ったように思う。ほんの一瞬のことだったけれど・・・きっと私だけでなく、殆ど、客の誰とも視線がそんなにあわなかったのではないか。本当に下ばかり向いてる役だったのだもの。
身代わりとなった子太郎の母、千代(菊五郎)が現れ、源蔵(仁左さまっ)はこれを斬ろうとする。千代に身代わりのことを問い質されて真相を知り、刀を納め源蔵は肌を入れるのだが、んもーーーーーっ、この肌を入れる仕草がまた色っぽいのであるっ。アタシたまんないっ。
ああ、来てよかった。
最後の最後までよかった。仁左さまはずーっと美しく、綺麗だった。 足が長い。腕が長い。何より手が大きく、何もかもが美しい。すっきりした足も腰も肩もよい。もうもう、どこを見てもよい。指も長い。すっきりしていて良い。もともと手の大きな人が好きな私であるが、仁左さまは何から何まで好みなのである。理想なのである。

この幕でも隣のオバチャン絶好調。やたらにうるさいのでたまりかねて途中で「だぁっとれ!!」と言ってしまった。小さい声だったのだが充分聞こえたらしく(左隣の美也子さんには聞こえなかったらしいが)オバチャン達は静かになった。もっと早く言えばよかったか?

それにしてもこれはマズイ。仁左さまの舞台となると私は仁左さましか目に入らない。他の役者さんなんて目に入らない。せっかく菊五郎が出ても目がいかない。他の役者さん達に失礼なくらい、オペラグラスで仁左さまばかり追っかけてしまうのだ。

三津五郎は、ちょっと可哀想なくらい目立たなかったように思う。この人には華がないのか?それとも菊五郎や仁左さまのほうが華があるから、かすんでしまっていたのか?始終落ちつきなく視線を泳がせてばかりの三津五郎とは何度も何度も目が合った。うーーん。あんたとは合わんでええから仁左さまと合わせたいのだが・・・それにしても三津五郎、全然、目立たない。ハデな黒い着物を着てはいたものの、すっきりしたいでたちの仁左さまのほうが数倍目立つ。黒い着物の襟元に白粉がつきまくって、こ汚いことおびただしい。あれではちょっと興醒めである。

舞台はあっという間に終わった。お尻が痛くなったから、短い時間ではなかったのだけど、私にとっては本当に、
「あっという間・・・」
だったのだ。(ちょっとパクリ入ってますな)
しかし、もっとしっかり視線を合わせるにはもっと目立たなアカン。(あいや、オペラグラスはしっかりはっきりくっきり観たいから使うのだけど)今度は着物でも着ていこうかしら。
正しい歌舞伎鑑賞ではないとわかっているが、仁左さまと視線を合わせるためならアタシ頑張るッ。

次は7月。
さぁ、ばりばり働くわよーーーーっ!!



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