火鉢の画像はないのだけど、忘れられないので書くことにした。
勿論、今の自宅にはない。そもそも、TVや映画の中でしか見たことはなかった。

3月初め、実家の母が大風邪を引きこんで寝込んでしまい、急遽仕事を休んで実家に帰った。父は自分の世話は一通り出来るから、それこそほっといても大丈夫だが、母の看病と、それから90歳過ぎて尚元気いっぱいの祖母の世話のためである。
んまーそれにしても祖母の元気なことといったら。
本当に90歳越えてるんだろか。母のほうが先に逝きそうなくらい、本当に元気である。毎日、朝は7時半、昼は11時半、夜は5時半に食事を摂る。母が風邪を引いていようと、来客があろうと、自分で決めた時間に台所のテーブルの自分の席にちょこんと座っている。時間を前以って聞いていても、馴れない台所(私が家を出てもう15年近く経つんだもん。年に2、3日しか帰らないし、もう”よそさまの台所”と言うくらい何がどこにあるかわかんないんだもーーん)なので準備が間に合わず、私が台所であたふたしているのを横で、佃煮をつまんだり、梅干しをつまんだりしながら軽く飲み始めるのである。コップに軽く一杯、と母に聞いたので、冷や酒で、一升ビンからトクトクと注いで出す。一気に半分飲む祖母。にんまりする祖母。そして準備を整え、祖母用のお盆に全て乗せてテーブルに持っていくとこう言われる。「お母さんはもう少しお酒をくれるよ。あんた(私のこと)が注ぐ量はちょっと少なすぎるごとある」。大嘘である。真っ赤な嘘である。母が指定した量よりも私が注いだほうが多いのだ。にもかかわらず、私のほうがガードが甘いと思ってそんなことを言うのである。寝床には別の一升ビンもキープしていて、夜中にしっかり飲むくせに、そんなことを言うのである。
祖母が私の実家に引き取られたのは5年ほど前のことで、もう、1年は保たないだろうと言われていた。いつ逝くかわからないから、いつでも帰れるようにしていなさい、と母に何度も言われたものだが、祖母は私が帰省するたびに元気になり、肌も綺麗になり、糖尿病もすっかり治り(あんなに飲んでるくせに)最近はなんと総白髪だった頭に黒い毛まで生えてきたのだから驚いてしまう。好きなことだけして、好きなお酒を飲んで、気兼ねのいらない娘に世話してもらう生活は極楽らしい。
祖母は1年程前に左腕を骨折した。そのため陶芸が出来ず、毎日本を見てはため息をつき退屈していたようだが、最近やっと土をひねることができるようになったので、昼間は、土を台に打ちつける、ばーん、ばーんという音がひっきりなしに聞こえる。ホンマに元気である。

私の朝の仕事は、父と母と祖母と私、それぞれみんな違う食事の支度と父のお弁当と、お猫さま達のお食事の準備。それぞれ食べる時間が違うのでやたら時間がかかるが、それが終わったら朝食の片づけと洗濯や掃除、そしてもう一つ朝の大事な仕事に火鉢の準備があった。
火鉢はつい最近、導入したものらしい。火鉢は母が作ったそうな。お正月に見た、作りかけのわけのわからん不細工な花瓶(と思っていた)は実は火鉢だったのだ。初めて見た。何をどうするのかわからないので横になっている母に聞きながら準備をする。準備といってもガスの上に網を乗せてそれに豆炭を乗せて熱し、真っ赤におこってきたら、火鉢に入れるだけなので簡単なのだが、その暖かいこと。
土をひねる時に水で手を濡らしながらするので手がとても冷たくなるらしい。ストーブでは祖母曰く「手をかざす角度が気に入らない」ので火鉢になったそうなのだが、本当に暖かい。祖母の部屋は、私が家を出る前まで使っていた日当たりのいい部屋なのだが、そこで火鉢を置くと本当に暖かい。夕方には土ひねりをやめ、エアコンに切り替えるので、それまで保てばいい。火鉢は、なかなか良い。

今私が住んでいるところにはストーブがない。ホットカーペットもない。炬燵もない。エアコンだけである。
(たまに友人宅にいくと炬燵があるので嬉しくて潜り込んでしまう。)
次の冬には、我家も火鉢を導入したいな。
灰は庭に捨てればいいし、火鉢も、そんなに大きくなくてもいい。
そこに手をかざしながらお茶でも飲みつつ時代劇を見る生活。
嗚呼、極楽、極楽。


今、渡辺謙主演の「藤枝梅安」のビデオを観ながらこれを打っているのだけど、小杉十五郎の役はなんと阿部寛。これはひどすぎる。以前も思ったが、この人はどうして剣の達人の役が多いの?こんなに殺陣がヘタなのに。堀部安兵衛の時も許せん、と思ったがコレもやっぱり許せんぞ。私は。



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