1月12日、大阪は松竹座に仁左衛門サマに会いに行った。
昨年末に友達のM子さんが誘ってくれたのである。某所の関西ロイヤルレディースこと、Mちゃんトリオで行こうと計画してくださったのだが仕事の都合で残念ながらMちゃんペアで行くことになった。
私の席は、前から4列め花道横。
かぶりつきの席よりもこのほうが見やすいだろうとM子さんのお母さまが取ってくださったのだ。
M子さんに「行こう!」と誘って頂いてから、昼の部にするか夜の部にするか、おやびんにきいてみた。おやびんは、私が美しい仁左衛門サマの大ファンなのをご存じなので、勇ましい弁慶よりも東吉のほうがよろしかろうと昼の部を薦めてくださった。どちらかといえばおやびんは鴈治郎の雪姫を推奨している感じではあったが、それを読んでも、前回の鴈治郎の白キツネならぬ白タヌキのイメージが強い私には、そんなもんかなぁ〜?と今にして思えば罰当たりな気分だった。
それよりも席。この席は問題である。ただ観るだけではない。この席ってば、もしかしたら仁左サマと目が合っちゃったりなんかするかもしれない。いや、目が合わないにしても、きっと一度くらいはこっちを見てくださるに違いない。とっておきのクリームを念入りに顔に擦り込んで就寝。これで目の下のクマもなくなるはず。お肌の調子も良くなるはず。むふふふふ。
当日、10時15分頃松竹座に到着。しかしまだ閉まっていて中には入れない。早く来たおばちゃま達が群れをなしている。M子さんと合流してお昼を買いに行った。M子さんお薦めの美味しいお寿司。お茶は食べる時に暖かいのを買おうねーとお弁当片手に松竹座にゆく。ウキウキして3階に上がり、席につく。それにしてもここは雰囲気変わったなぁ。ここには7年か8年前に来たきりだ。ある人と宗右衛門町で飲んだ後、ふらりと入って何かを観たのが最後。その人は6年前に亡くなった。形見になってしまった指輪は、今も、私の左の小指にある。結局、お墓がどこにできたのか私は知らない。以前一緒に何度か飲みにいった息子さんの電話番号も、今は、通じない。その人のお通夜で顔を合わせたのが最後である。色々事情もある人だったから、もしかしたらお墓は作られていないのかもしれない。お骨をどこかのお寺に預けてあるのかもしれない。しばらくは、その人のお墓がわかったら毎年必ずお墓参りに行こう、行かなくてはいけない、と思っていたが、今はその気持ちもかなり薄れている。薄れているといっても、忘れているわけではない。お墓参りをしていないからといってその人のことを忘れているわけではないから。折りに触れ、思い出しているから。この先も決してその人のことを忘れることはないと思うから。
そんなことを考えながら席に座ってみるとこいつはすごい。本当に花道横じゃないの!そういう席なのだから当然なのだけど、本当に、花道の横なのである。冗談じゃなくて本当に足首をつかめちゃうじゃないのっ。
そして舞台は始まった。「揚屋」は面白かった。宮城野が使っていた化粧台がよかった。あれ、ほしい。これには仁左衛門サマは出ないので気楽に楽しめた。休憩になり、舞台セットの変更が始まる。花道の上に板を置いてゆく。大きい板を運んできっちりと置いていく男の人達は殆ど、眉を綺麗に手入れしていた。下っ端の役者さん達なのかしらん。M子さんとお弁当を食べて幸せ、幸せ。私はにぎり、M子さんはちらし。ああ、ちらしも美味しそう。だけどM子さん、それでお腹一杯になった?足りないんじゃなくって?
次の出し物は「羽根の禿」「うかれ坊主」。これにも仁左サマは出ない。羽根を追う富十郎さんが可愛らしくみえるから不思議。芸とはすごいものである。そして4、5人出てきたが私はその中のある人に目が釘付け。しばらく息をとめて見入ってしまった。この人、ええわああああ。仁左サマの次にひいきにしてしまいそうっ。「うかれ坊主」も面白くて、思わず何度も笑ってしまった。
さてまた休憩である。次はいよいよ仁左さまの出番。気合いを入れるため化粧を直して、オペラグラスを購入。M子さんには笑われてしまったが見たいものは見たいのである。前から4列目にすわってるのにそれでもまだ見たいんかい!と自分でも笑ってしまったがそれでもまだ見たいのである。おやびんは最前列でもオペラグラスを使われるそうな。舞台の細々したものまではっきりくっきり見たいそうな。私もそう。前回、おやびんにお借りしたオペラグラスは味のあるとてもよいお品だった。それに及ぶものではないが、私のお気に入りのオペラグラス、あれは今どこにあるんだろう?何年か前から行方不明になっていて、こないだから探しているのだが見つからない。だもんで現地調達。好みではないデザインだが仕方ない。
コーヒーを買って席に戻った。さぁ、いよいよ仁左サマよ!

幕が開く。さっきよりもずっと豪華な舞台装置。桜が下手にだけあるのは関西風なのだそうな。鴈治郎の雪姫。この赤い着物も関西ならではのものらしい。前回みた時よりも鴈治郎、綺麗にみえる。相変わらずのごっついお腹だけど、ごっつい丸太ん棒のような体形だけど、綺麗なお姫さまにみえる。みえる、ではなくて本当に綺麗。ファンになってもいいぞ、と思ったくらいである。
そしていよいよ、軍平に連れられて東吉登場、仁左サマ!花道を歩いて、そしてなななんと私の斜め少し前に座ったではありませぬか!!軍平が大膳に報告し、そしてそのままの姿勢で東吉が挨拶。その間ずうううううっと横顔を眺められた私は世界一の幸せモノ。花道は私の目線よりもちょいと高く、背筋をピン!と伸ばして見たら手をついている仁左さまの右手の小指が見えた。深すぎるくらいに切り込まれた爪。ううーん、ますます私好み。もう一度お顔を見たらば仁左さまの瞳は光のせいかちょっと茶色っぽい鳶色だった。これはやっぱりすごい席だわ。やっぱりM子さんのお母さまには何かお礼をしなくちゃだわ。改めてそう思う。そして仁左さまは舞台へ。美しい・・・。思ったよりも仁左さまの出番は少なく、桜吹雪の鴈治郎のほうが印象的だった。そう、桜吹雪は本当に幻想的なまでに美しかった。ネズミも出てきた。でかい。赤い目。アルビノだわね、と私と同じハム飼いのM子さんと笑いあう。それでも仁左さまはやっぱり美しい。何から何まで美しい。鴈治郎退場後、ひたすら仁左さまだけを目で追う。上手に行ったら即座にオペラグラスで追っかける。声が高いのはイマイチ私の好みではないが、それでもやっぱり仁左さまである。何よりも目がよろしい。いや肩もよろしい。足の運びだってよろしい。途中から後ろのおばちゃま達がなにやらくっちゃべってうるさいったらありゃしない。「だぁっとけ!」と怒鳴りたいのを我慢して、ひたすら仁左さまを眺めた私だった。ラストは拍手もしたいけどもっとお姿を見ていたい、オペラグラスを覗いたり拍手をしたり、大忙しだった。だけどあっという間に終わってしまった。・・・夜の部も見てみたいぞ。うーん。
上の写真で番附の横にあるのは鴈治郎の桜吹雪の花びらである。足元にひらひらと落ちてきたのを拾った後、帰る時に花道に残っていたのをまた少し拾った。ちゃぁんと桜の花びらの形に切ってあった。前列の人はかき集めて袋に入れて帰っていった。そこまではいらんだろうに。
仁左さまは本当に美しかった。行ってよかった。話、役どころは100%好みではないとはいえ、それでもこないだTVで観たスカタンな役よりはずうっとよかった。仁左さまのファンでよかった。間近でお目にかかれて、大満足である。今日はナマ仁左記念日である。残念ながら視線が合ったりはしなかったけれど、それでも満足。
じっくり目の保養をし、大満足で松竹座を後にする。心斎橋でお茶して、帰りに梅田で、おじじへのお土産にケーキとクッキーを買って帰る。これが私の口に入ることはないだろうが・・・。
M子さんありがとうございました。M子さんのお母さま、ありがとうございました。
M子さん、また誘ってね、今度はMちゃんトリオで行こうね!



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