祖母作・大皿。
三角法で図面を作成、色、大きさ、形をきっちり指定した、曰くつきの大皿である。
無理強いしたわけではない。「注文品を作ってみたい」と、祖母が言ったので、注文したのである。
大きなお皿がずっと欲しかったのだ。一人暮らしの頃は必要なかった。マグカップをボウル代わりに卵を溶いたり、とにかく、代用品で事足りた生活だったので、本当に必要なかった。
結婚し、家にお客が来ることが増えて、必要になってきたのだ。でも欲しい!と思うものがない。
祖母や母が陶芸を始めたのを聞いて、しめしめ、と思った。本当に欲しいものは、最後には作るしかない。そうわかってきた頃だったからだ。
祖母と母が作るものは全然違う。同じ湯のみ一つ作るにも全く違うものができてくる。私は祖母が作ったもののほうが好きである。しかしやっぱり90歳を越えているので、まず、手の力が弱い。大きなものが作れないのだ。半分無理を承知で頼んだ大皿だが、これは祖母もノッて作ってくれたので良かったが、こんな大きなものはもう二度と頼めない。最初で最後、と思ってオーダーしたのだ。
指定したものは白だった。白一色で作ってもらいたかったのだ。しかし完成品は違った。・・・縁が緑である。「なぜかこの色が出てしまった。おかしいな」祖母の主張である。それも縁だけ。中は白いが、縁だけ、ぐるりとそれは緑。祖母は織部が好きである。それがちらりと頭をよぎったが、主張を信じることにした。
春、寄火人窯に行った時進藤さんや鍋島先生に、これこれこういうことがあったと言ったところ、お二人とも即座に「それは偶然じゃない。わざとだよ」とおっしゃった。やっぱり私はばあちゃんにだまされたのだ。
なんだいなんだい、オーダーした通りのものをきっちり作ってみたいなんて言っといて、ばあちゃんてば。
・・・だまされたとわかっていても、これは私の宝物である。
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