岡山県苫田郡加茂町にある寄火人窯である。
先ごろ我が家に泊まりに寄って下さった進藤さんが、毎年一ヶ月ほど窯焼きのお手伝いに訪れるところ、として、最初は知った。進藤さんも私の学校の先輩だが、ここの主である鍋島俊道氏も学校の先輩である。
ここで何度も書いたことだが、私の93歳になる祖母は大学で陶芸を学んでいる。現役の女子大生なのである。進藤さんも陶芸をされることから、軽い気持ちでメールで紹介させてもらい、それからはメールには殆ど祖母が登場することになった。実家に帰省した時祖母にも話し、いつかお会いしたい、と祖母も言っていた。祖母が作品を贈りたいと言い、去年、恥ずかしながらも進藤さんにプレゼントしたこともある。祖母は進藤さんからのお礼の葉書をもらってとても喜んでいた。
「葉書にレイちゃんて名前があったよ、お嬢さんがおられるのね、あんたと同じ、カタカナの名前だね」・・・・ばあちゃん、レイちゃんは犬だよ。
3月、「窯出しの時にお祖母ちゃんと来てみない?」と誘われた。折り悪く祖母は腕の骨を折ってしまい、その時はお誘いをお断りしたのだが、実家に帰った時、祖母に「今ね、進藤さんがね、岡山に来ているの。お祖母ちゃんといっしょに来ないかって誘われたんだけど、お祖母ちゃん腕の調子もそんなだから、いけないねぇ、来年、行こうねぇ」と言った途端、「大丈夫、行くよ。何を着ていけばいいかね。」とえらい乗り気。私の実家からは2時間半くらいかかる。確かにお出かけ大好きなばあちゃんだが、大丈夫だろうか・・・進藤さんに連絡してみたところ、快くOKして頂き、次の日早速出かけた。
進藤さんは祖母の骨折を聞き、「陶芸ができなくて気の毒ね」と言ってくれたが、私は、それよりもお酒を控えるよう医者に言われたのが一番ショックだったろうとにらんでいる。そんな祖母である。
母と祖母と夫と私の4人で岡山へ。懐かしい津山への道である。ここを何度通っただろうか。加茂へはそれこそ卒業して以来である。津山までは何度か来たこともあるのだが・・・道に迷い、「なんでもっとちゃんと道を聞いとかんかったんや!」と夫に叱られ(でも初めてくる道なんだもん〜)半泣きで電話し、鍋島先生に迎えに来て頂いて、やっと辿り着いた。鍋島先生、進藤さん、ゴメンナサイ。
寄火人窯には、今、鍋島先生、進藤さん、さつきちゃん、さつきちゃんの彼、そしてレイちゃんがいる。レイちゃん!レイちゃん!初めて会ったレイちゃんは元気いっぱい、そして想像してたよりも大きい!顔をなめてくれたり、飛び掛かってくれたり、とても喜んでくれている様子。可愛い〜。可愛い〜。
窯を見学。最初の写真がそれである。ここの説明は進藤さんのHPに詳しく書かれてあるのでそちらを見て下さい。
私はこういうところを見るのは、初めてである。祖母と母はちょっとは勉強しているだけあって、何やかやとしゃべったり質問したりしているが、私には全然、ちんぷんかんぷんだった。備前焼は好きである。今、一番好きな焼き物といえば備前焼きなのだが、知識はない。こんな色がいい、とか、こんな形がいい、という、好みだけである。
鍋島先生と進藤さんは作品が出る度、焼きがどうの、色がどうの、薬がどうのと話していた。ただ形作って焼くだけじゃない、奥の深いものなんだなぁ・・・と聞いていた。うっとりするような器や花瓶などがどんどん出てきて、先生の指示に従い、それぞれの場所に並べられる。とてもどきどきする時間だった。
形作るだけが陶芸ではない。土を選び、こね、形を作り、乾かし、薬をかけ、焼く。いろんな工程を経て一つの焼き物が出来上がるのである。何かを作るって、すごいことである。最初から最後まで自分の手をかけられるって、すごいことである。
周りは緑、緑、緑である。お昼にご馳走になった独活は鍋島先生自ら庭から取ってきて下さった。敷地のはしっこには畑もある。緑に囲まれ、陶芸に打ち込む。進藤さんがここに来るのをとても楽しみにしている理由がよくわかった。進藤さんは仕事をしているが、主婦でもある。主婦が一ヶ月、家を出て好きなことに打ち込むのは大変である。家の中だけでなく、外からの圧力もいろいろあるだろう。旦那様が理解がある、それもすごいことだが、理解してもらえる進藤さんはやっぱりエライ。いろんな大変さを乗り越えて、いろんな問題をクリアして、好きなこと、やりたいことを持ち、それに打ち込む進藤さんは、やっぱりカッコイイ。
レイちゃんは窯の中をちょろちょろしているが、今まで何も割ったことがないという。なんて賢い!うちのハムどもなら片っ端から顔を突っ込んで器に入り込んでひっくり返して割ってしまうだろう。レイちゃん、あなたはなんて賢いの!
お昼ご飯をご馳走になり、昼間っからお酒を少々飲んで、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。突然こんな人数で押しかけてずいぶんご迷惑をおかけしてしまいましたが、鍋島先生はとても気持ちよく迎えて下さり、楽しい話を聞かせていただきました。ありがとうございました。
鍋島先生にお会いできて、進藤さんにも、レイちゃんにも会えて祖母もとても喜んでいました。ほんとにほんとに、ありがとうございました。
進藤さん、アタシ、レイちゃんの箸置き、買うのを忘れてました。可愛いから、すぐ売り切れてしまうでしょうね・・・来年も作ってください。今度こそ、窯から出たばかりのものを買います!


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