1999年11月22日、東京は国立劇場で、初めて歌舞伎を見た。20日から22日まで東京に夫婦で遊びに行ったその最終日の午後の舞台で、おやびんからの粋なプレゼントである。しかしこんな高価なプレゼント・・・・覚えてろよ、おやびん。
小さい紙はチケット、大きい紙は駅からの道順である。私と夫とAさんの3人組は、揃って初めての歌舞伎見物、初めての国立劇場なので迷わないように、細かく細かく指示してあった。おやびん、ありがと、ありがと。
駅を出て、これが目印の自動販売機か!と言いつつ歩いていると前方にとても上品そうなおばさまがいて、私達が道を尋ねると道案内をかってでてくれた。そのかたも丁度国立劇場に行くところだったらしい。なんでもお母さまに呼ばれたのだとか。このかたのお母さま!?何歳だ、一体・・・と思いつつ、ついていく。
劇場の表のほうから入っていった。うおおお、ここかここか!お母さまもすでにいらしててご挨拶。白髪の、着物姿のとても上品そうなかただった。
中は人が多く、あちらこちらでお弁当を広げていた。食堂の予約もできるらしいが、お弁当を買うことにして、弁当屋さんをチェック。どれも美味しそうじゃのぉ。

1階と2階のお弁当屋さんをチェックして、2階で買った。この旅行では豪勢なものをたくさん食べつづけている。そろそろやばい。デブに拍車がかかる。朝食が遅めだったのもあって3人共小さいお弁当にした。いろんなものがぽっちりづつあってなんだか可愛いお弁当である。食べる時お茶を買おうね、と話して劇場に入っていった。
3人並んだ、前方中央のとても良い席だった。がしかし、私の前には着物の女性が座っている。髪を高く結い上げて、姿勢もよく、正直言ってかなり邪魔だ。結局最後のほうは旦那と席を代わってもらったが、とにかく舞台の中央がまるっきり見えない。首が弱い私はあまり変な姿勢を続けることができないし、くっそー、場所を考えろよ!と言いたいのを我慢して右から左から頭を動かし続けて見ていた。私も、後ろの席の人にしてみたら、落ち着きのない邪魔なヤツだったと思う・・・・。
前はとにかく静かで邪魔だったが、左後ろは視界には関係ないが別の意味で気になった。ビールを飲んでいるのである。匂いもするし、酔ってきてるのか連れと喋る声も少しづつ大きくなっていく。うおお、こんなところで飲んだら眠っちゃうぞ。案の定途中から爆睡していたが。
劇場には年配の人が多かった。それもよく寝ている。舞台では重たい衣装を着けて重たいかつらをかぶって頑張って動いてる人ばかりだが、客席ではよく寝ている。なんのために来てるんだろう・・・?

そしてお弁当。夫は話し好きというわけでもないし、あまり社交的とは言えない性格だが、Aさんは以前の会社の同僚ということもあって気楽に接することが出来るらしく、私もとても気が楽である。さいわい今回の旅行で会った人とは初めて会った人ともずっと以前から知ってたような親しさがあって大丈夫だったけれど。食事は楽しく進行。食べだすと量の少なさにちょっと不満。もっと大きいのでも大丈夫だったみたい。
食べた後の舞台はどうにも眠くていけない。それというのも前半で私を盛り上げてくれた人が後半はすっかりおとなしくなってしまったのだ。玄関であれだけ髪振り乱して怒ってたのに、もういいのか!?復讐はしないのか!?キツネの役で、おやびん絶賛の主役の人が舞い踊っていたが、ちょっと太めのせいでタヌキに見える。私とAさんは誰が誰で、誰がおやびん絶賛の人かさっぱり途中までわからなかったが夫は「あの人すごい」と最初から誉めていた。芸術オンチだと思ってた夫がわかるなんて。なんだか悔しい。そういえば文楽を観に行った時もそうだった。簑助がどの人形を扱ってるかすぐわかったのだ。悔しいけれど、これで歌舞伎大好きになってくれて、一緒に観に行ってくれるようになると私は助かる。話題のネタは一つでも多いほうがいいもの。
おやびんに借りたオペラグラスでも楽しみながら、舞台は終わった。面白かった。Aさんも楽しかったみたい。良かった!おやびんに感謝、感謝、感謝。この日のディナーはおやびん宅でおやびんの手料理をご馳走になる。急いで目黒に向かうべく、私と夫とAさんは国立劇場を後にした。




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