長ちゃんの、大事にしていたお立ち台である。現在はゴルゴが使っている。
長ちゃんはいつもここに座って身繕いをしていた。長い時間かけて綺麗にしていた。寝ぐせのついた長ちゃんの思い出は、だから殆どない。

長ちゃんはうちにほぼ2年、いた。
帰省する直前に迎え、全然慣れてないまま広島まで車で連れて帰った子である。
とにかく夫のお気に入りだった。手ざわりも顔だちも体型も。夫は長ちゃんさえいればいいというほど、お気に入りだった。
弟が次々に増えても夫のナンバーワンは長ちゃんだった。お侍の名前通り、潔い子で、はっきりした子だった。
もうすぐわが家に来て2年だね、そう話していた矢先、長ちゃんは旅立った。あっという間だった。容体がおかしくなって丸一日、傍にいたのだが、見てるだけで辛かった。夜は越せないだろうと思っていたのに、朝まで頑張ってくれた。やっぱり帰省直前で、預けることはせずこの子だけ連れて帰ろうと決意、用意している間に、旅立った。一日、苦しんで、苦しんで、でも眠った時、耳を大きく開いて、ピンとさせていた。長ちゃんの耳。大きな耳。
あれからよくお店でキンクマを見かける。でも長ちゃん以上の子はいない。でっぷりした体型、ウエストのない体型、ドラム缶のような体型。手首と顎がほんのり白くて、ファスナーがあった長ちゃん。顔が少し長くて、目が大きかった長ちゃん。もんぺの会を作り、最近とある団体で作成された「もんぺ三兄弟」では長男になった長ちゃん。ふわふわの毛の長ちゃん。ヘッドバンキングの激しかった長ちゃん。ニンジンが大好きだった長ちゃん。長ちゃん。長ちゃん。
彼は今ごろ、どこかにあるというハムスターランドで、トロちゃんのボディガードをしているはずである。用心棒の長ちゃん。しっかり勤めを果たしたまへ。
そしてまた、帰っておいで。



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