2003.7.18...番付と舞台から舞い落ちた花びら。

2003.7.18...衝動買いした本。

2003.7.18...直筆サイン色紙!!

2003.7.18...風呂敷。



仁左さまにお会いするのは今年3度め。
もしかしたら今年はこれで終わりかも。

前日に仕事が急に立て込んで、もしかしたら諦めなければならないかも、と覚悟までしたのだが、どうしてもやっぱり諦められなくていくことにした。このためにがんばって仕事してるのだもの、これに行かなきゃなにを楽しみに働くのだ?と自分に言い聞かせながら。
前夜も、当日の朝もそれで悩んでぐずぐずしていたから、着ていこうと思ってた着物の準備も出来なければパックもできなかった。天気のことも考えて洋服にしたけれど、ああ、もっとちゃんと準備したかったなぁ。
でもでも結局気になって気になって十分満足したとは言いがたい。
結局舞台ハネた後、仕事先に向かって2時間ばかり仕事したのだけど。

朝、松竹座に着いたのは10時45分頃だった。
お昼を買って、番付を買って席に着く。勿論今度はかぶりつきの1列目12番。かぶりつきのほぼ真ん中。ああ、やっぱりここは落ち着くわ・・・・。やっと帰って参りました、てな気分である。
両隣は物静かなおじ様&おば様でこれまた安心。後ろが少しうるさかったが、まぁ、仁左さまの場面では静かだったのでヨシとしよう。
「関西歌舞伎を愛する会」の主催なので会の売店もあった。去年、仁左さまのサインを買えず悔しい思いをしたものだ。古本を漁って初めて行った舞台の番付を探したところだ。その後おやびんから番付を頂いたので、今回は古本コーナーを漁ることはないが、たくさんの役者さんのサインが並ぶ中、やっぱり仁左さまだけは売り切れ。仕方ないよね・・・と諦めつつも、会の、去年も話をしたおじちゃんと立ち話。今年もサイン、買えなかった・・・とちょっと愚痴ってしまいました。

一幕目は橋之助。
橋之助は、「元就」は面白くてよかったけれど、全体的に好きな役者さんではない。何故かというと、熱いのだ。私は熱い人はだめなのだ。まぁそれでも不細工なほうではなし、時々顔を見るがやっぱり集中できない。扇雀、うーん、綺麗か?そうか?動きは嫌いではないが、綺麗か?本当にそうか?
と考えていると、舞台の効果音として柝を鳴らすおじさまが舞台の右袖にいることに気がついた。どの舞台の時もあのおじさまだった。手首や指にテーピングをして、軽い音、重い音、激しい音、さわやかな音、さまざまな音をあの二本の木から発している。
今まで何度も何度も、「ああ、あそこで鳴らしているんだな」と気がついていたのにじっくりみたことってなかった。となると右が気になってたまらない。手の上げ下ろしに注目してしまう。
これってよくないことよね。かぶりつきにいて、袖の効果の人に見惚れてるなんて、よくないことよね。でもでも気になるんだもの、すごいんだものーーー。

休憩は30分。
おにぎりを食べてお茶飲んで、売店に行く。
ゆうべからの仕事のストレスのせいか何故か買い物に走る私。
念願の風呂敷を購入し、「関西歌舞伎を愛する会」が開いている小さな売店で本も買う。
やっぱりサインは売り切れのまま。(当たり前)
生写真を選んで、売店に注文しておく。次の幕間に渡されるシステム。南座だったらその場でもらえるんだけどね。南座は一枚一枚、透明のフィルムに入れてくれるのだけど松竹座は3枚買っても紙に挟まれるだけ。ケチー。

二幕目は扇雀。
あんたも嫌いじゃないが、どちらかというと丸まっこい兄さんのほうが好き。なんてったって私をこの松竹座の舞台にあげて手をとってくれた人だからね。ふふん。
鴈治郎が若い娘を踊るときは目つきがうっとりしていて、本当になりきってる感じだが、扇雀は目が冷めていた。絶えず舞台のあちらこちら、客席のあちらこちらを、まるで誰か探してるみたいに視線が泳いでいて、観ていてあまり楽しくなかった。

次に時蔵、いいじゃないの!!!なかなか気に入りましたぞ!
ここで愛之助を初めてじっくり観てみたけれど何か気に入らない。なんでだろう?顔はいい。顔はいいが、何か気に入らない。何がだめなんだろう?秀太郎の養子になってるくらいだから、ダメなわけはないのだが、何故かしっくりこない。なぜか見惚れることが出来ない。しばらく観ていてやっとわかった。腕が短いのだ。足が太いのだ。肩幅が狭いのだ。膝下の短いこと。腕の短くて太いこと、手首の丸まっこいこと、ああ、見苦しい。私の好みではございません。あの顔でこれはないよなぁ。はなはだ身勝手な見方ではあるけれど私の好みではない。それっきり視線は二度と愛之助には向かなかった。
その後は時蔵ばかり眺めておりました。
こう考えると仁左さまがどれだけ美しく条件のそろったおかたかと改めてうっとりしてしまう。
体型でいくと鴈治郎はまさに背は低いわ腕短いわ足太いわ短いわ、なのだが、女形としては可愛いらしいし、観れば観るほどすごい人だと感心するし、観れば観るほどファンになる。愛之助に対していつかこう思えるときが来るか?今のところ可能性はかなり低い。自分が男前だってわかってる、自覚してるような態度はアカン!好かんぞアタシは!!
時蔵は、この場ではイキのいいねぇちゃんの役らしく、すごく似合ってると思って、時蔵、あんた気に入ったよ!
この幕でもやっぱり柝を打ち鳴らすおじさまの手に注目。素晴らしい。素晴らしい芸だわ。

15分の休憩になり、写真をもらいに売店に行く。
3枚購入し、代金を払って化粧をなおす。
やっと仁左さま。やっとかぶりつき。化粧なおしにも気合が入るというものである。
エレベーターを上ろうとしてサイン売り場を見てみると仁左さまのサインが!!!!!会のおじさまに聞いてみるとさっき3枚だけ届いたとのこと。私が再度立ち寄ればいいなと会のほかの人と話していたところだという。気にかけていただいてありがとうございます、買いますとも、買いますとも、買いますともさ!!!!値段も聞かずに「いただきます!!」。値段は会から買うだけあって安かった。いやでも仮に倍の値段だったとしても、絶対買ったぞ、私は。
嬉しくて嬉しくて、席についてから開いてみた。綺麗な、あの仁左さまの直筆のサイン。夕べ書かれたものか、劇場についてからお書きになったものか、どちらにしても嬉しい、嬉しい。
ひとしきり眺めていると隣のおば様たちが話しかけてきた。「それ幾らするの?」「二千円です」「わぁ安いなぁ!」「もう欲しくて欲しくて」「そらそうやなぁ、仁左衛門さんのはすぐ売り切れやもんなぁ」何故毎回誰かに話しかけられるのかは相変わらず謎ではあるが皆さん親切なのは嬉しい。
嬉しくて嬉しくてにこにこしてたら幕があがった。

三幕目、やっと仁左様!!!
最初は扇雀や愛之助。秀太郎がいると秀太郎にすぐ目がいく。うまい。この人は本当にすごい。見る度にどんどん好きになっていく。
そして仁左さま登場!!面白い!!勢いがあって威勢がよくて関西弁でぽんぽんしゃべる仁左さま。愛之助とのからみでも愛之助になんて全く目がいきませんことよ!
ここ、楽しい。こんなにぽんぽんと会話を飛ばす仁左さまを観たのは初めてじゃなかろうか。
お気に入りの秀太郎との絡みも素晴らしく面白い。イキがあって、お互いが本当に楽しんでやってる感じがして、見てるほうも楽しくなってくる。
それでも仁左さまのびっくりするくらい細くなった腕や足を見ると不安になる。まだお体の調子が悪いのでは。
仁左さまのお声は、総じて高いと思っていた。でも今回のお声はドスをきかせた低く太い声。でも全く下品ではなく、とてもイカしているのだ。
初めて聞いた関西弁でドスをきかせる仁左さま、威勢のいいお姿は、大好きなお侍さまの姿ではないけれどこれまたカッコイイ。すべて捨ててついていきます!と言いたくなるくらいステキ。
ああなんて足が長いのかしら。ちょっと以前よりも細くなってはいるけれどなんて膝下も長いのかしら。なんてすっきりした足首。なんてすっきりした足の指。広い肩幅に長い腕、長い指先にすっきりした手首。顔もどこも、うっとりしてしまうほど、もう、非の打ち所がないじゃありませんか。
ああ来てよかった。美しい仁左さま、ああ、かぶりつきでよかった。ああ、来てよかった。
仕事が気になりながらも、完全に集中できなくても、やっぱり仁左さまはステキ。もう、本当に美しくてステキ。
微笑ましい夫婦、親子のシーンは本当に面白くて秀太郎もよくて、ああ、この場面、とってもお気に入り。

この後小金吾討ち死にのシーンがあったが、これがやけに長い。
長くて長くて、退屈だった。
やと弥十郎が出てきてほっとした。いやぁ、愛之助だけでこれだけもたせたらアカンやろ。
転がったとき足の指が見えた。丸っこい指・・・やっぱりアカンわ、あんた。

場が変わり、今度はお店が舞台になる。孝太郎が出てくる。ああ、あんたこないだ背広着て立ってた人ねん。
嫌いではない。美しくも綺麗でもないけれど、観てて不安になることはない。今回はやけに可愛らしい役だった。
時蔵も出てくるがこれがまたなよなよしてて観ててイライラしてくる。いくらそういう役とはいえ、ああもう、イライライライラッ。この役自体、好きになれないが、初めにこの時蔵を見てたらお気に入りにはならんかったぞ。でもってこの人実は絶壁なのね。
時蔵くんはやっぱりイキのいい姐さんがいいと思う、私は。

そして仁左さま登場である。
こうなると現金なもので、もう柝を打ち鳴らす人にはまるっきり視線はいかない。ああやっぱり仁左さまが誰よりも一番!
自らの妻子を縛って偽って差し出す権太、ああ、涙が出そう。
なんて悲劇。普通だったらもっと涙がぽろぽろこぼれていたに違いない。どこか頭にひっかかる仕事のことさえ無ければ。今回が今までで一番泣けた話なのではないだろうか。「木の実」でのあの夫婦、親子のほのぼのしたシーンがよみがえる。あああんな絶壁男一家なんかを助けるために、あんた達、泣かせるねぇっ。おんおんおん。なんて理不尽なんだろうねぇっ。そして短気な父親に刺されて死ぬなんて、権太、あんたも悲しいねぇっ。「親父、うまいこといったデっ」というせりふを最後まで言えずに。やっとやっと父親にほめてもらおうとしたのにねぇ。あんなに仲のよい夫婦だったのにねぇ。

舞台が終わったのが3:40。
そこから仕事先に向かった。ああ、今回はあまり集中できなかったけれど、お元気なお姿を拝見できて幸せでした。
2時間ばかり働いた後地鶏の美味しいお店でたらふく食べて万寿を何杯かいただきました。美味しかった。ぐひっ。

次の歌舞伎は、いつかなぁ・・・。
仁左さまには今度はいつ、お会いできるかなぁ・・・。




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