6月26日、一日限りの公演にでかけた。
初めて自分で電話してGETしたチケットだったが、まことにまことによろしくない席だった。
たった一日だけだし、仁左様の出番も役ではなく座談会。きっと時間は長くない。そうはわかっていてもはたまた「坂東竹三郎の会」なるタイトルの坂東竹三郎にもとんと覚えがなくても、やっぱり行きたくなっていつもどおり美也子たんにお願いした。
ルンルンして待っていたら、一般発売日の前日、松竹関係の発売日の夜に電話がかかってきた。
なんと、その日取れる最上の席は一階後ろから二列目だという。それはあまりにも後ろ過ぎる。ただでさえかぶりつきに慣れてる私、3列目でも物足りない私にはあまりにもむごい。一般発売用の席がもしかしたらもっと前に確保されているかもしれないので自力で取ったほうがいいとのお言葉でした。
かくなる上は当日電話開始10分前から電話かけつづけ、ちょうど発売時間開始ジャストに電話がつながった。ラッキー!ここまでは本当にそう思っていた。
がしかーし、そのときですら、1階は最後列、2階は前から4列目。
とにかく一番前に座りたいんです!!とお願いしても空いているのは2階前から4列目。
涙が出そうな席だった。
でも観たい。仁左さまに会いたい。
こうしてとりあえずその席を確保したのだった。
今回はチケットを自分で取りに行く。
いつもいつも電話かメールでお願いして送っていただいて、いつもいつも私ってば楽して甘えてるよなぁ・・・と思いつつ、暑い昼間に金龍ラーメンを横目に松竹座に行った。
往生際の悪い私はチケット受け取り時にも「もっと前の席、キャンセル出てません?」と聞いたが結果はダメ。あー、もうあの席で諦めるしかない・・・とやっぱり金龍ラーメンを横目にぐぅぐぅおなかを鳴らしながら仕事先に行く私なのだった。
公演日が近づいてもあまり気分が盛り上がらない。月末近く忙しいため、朝仕事先に行って早めに切り上げて松竹座に行くことにした。いつもだったら夜の部でも朝からお風呂に入ってゆっくりパックなんぞしてゆっくり服を選んで時代劇専門チャンネルを見ながら気分を盛り上げて気合入れて化粧をするのだが今回は仕事先から行くからたいした服でもないし化粧だっていつも通り手抜きまくりである。いつもストッキングとかハンカチとか、何かおニューを身につけるか持っていくかする私だが今回はそんな気になれない。
ああ、かぶりつきでもなし、短い時間の座談会、こうまで気合が入らないものなのか。
当日、あたふたしてお弁当買って会場入り。
冗談じゃないよな、とボヤきつつ、席につく。あらまぁ、結構見晴らしいいじゃない。高いところ大好きの私はちょっとご機嫌がなおる。
右隣の年配の女性が、黒いカーディガンを羽織るのに四苦八苦していた。狭いもんね。手を貸したところ、おしゃべりが始まった。その女性の右の男性は85歳になる旦那様。奥様はなんと77歳。でもお肌は綺麗でとても若く見える。そこから色々おしゃべりが始まった。私はこういうところに一人でいると大抵、いろんな人に話しかけられるのだ。一人でぽつんと寂しそうに見えるのだろうか?
聞くところによるとこのご夫婦も松竹友の会でチケットを買ったのだがこんな席になってしまったとのこと。「毎月松竹に来てるのにこんな扱いは初めてだ」とプンプン。ごもっとも、ごもっとも。いつもは前から2列めか3列めなんですって。奥様はかぶりつきで役者とじっくり見つめあいたいそうだが、旦那様は見られるのがいやだから2列め3列めのチケットを取るんですって。奥様曰く「玉三郎に見つめられたらアタシもう・・・」とうっとりしている。わかるわその気持ちっ。言いながらもなかなか埋まらない1階席を見ながらまたボヤく。きっと前のほうや一階席は後援会だのファンクラブだのご贔屓筋なんですよねぇと話す。全くなっとらん。一般をまず前にせんかい。ファンあっての役者やぞ。ぷんぷん。おおいに盛り上がった頃舞台が始まる。
坂東竹三郎が緑の袴で舞台に出てきた。松竹の会長も出てきてなにやら喋っていた。ああ、仁左さま、今頃舞台の袖にいらっしゃるのかしら。5月は舞台を降板されたけれど今の体調はどうなのかしら。幕があがると、でっかいスクリーンがあり、亡きの舞台が上映された。お隣の奥様は「懐かしい」と時々つぶやいてらした。
座談会になり、アンパンマン我當、秀太郎、そして仁左さま登場。ああああああお久しぶりでございます!!
濃い、地味めなお着物姿、ああなんて素敵。なんて腕が長いのかしら、なんてすっきりしたお姿なのかしらっっ。もう、きゃぁきゃぁもんであるがあまりにも遠いため、オペラグラスを必死にのぞく。
倍率をメいっぱいあげてのぞきこむが、ピントを合わせてるとなんだか気持ち悪くなってきた。うう。オペラグラスから目を離すとまた視点が定まらず気持ち悪い。この繰り返し。せっかく仁左さまなのに。でもがんばるっ。
以前よりなんだかお痩せになった感じ。まだお体は本調子じゃないのかしら。ああ仁左さま。
座談会は、私の知らない人の話なのでほとんどわからないが、それでもそれぞれの話し方は面白くて聞き入ってしまう。やっぱりトシのせいか「あれは○○の舞台のときで」「いやそれは××ですよ」だの、「あれはなんだったかな、えー、えーーーと、あーーー」などという言葉が連発されるが、アンパンマン我當のやわらかい喋り方、秀太郎の身振り手振り入りの話の面白さ、仁左さまの美しさと言葉遣いにうっとりしてしまう。ここでもやはり注目は秀太郎。お体がおつらいのか、にいちゃん達と一緒だからおとなしくしてるのか、物静かで言葉少ない仁左様に代わって喋り捲りの秀太郎。アンタいいねぇ。うんうん。本当に身振り手振りが面白い。私もあんなふうに手を動かしてみたいっ。
仁左さまは兄弟のなかで一番背が高く一番足が長い。ひざの高さが全然違うねぇ、と足元に注目してみたらば平たい鼻緒のすっきりした草履を履いていらっしゃった。ああ素敵。アンパンマン我當も秀太郎も丸っこい鼻緒だった。
オペラグラスでお顔をのぞくとこれまた素敵。耳の形がいいのねん、この人は。
そういえばしばらく前に「市川羽右衛門はとても男前だ」とおやびんに聞いたので画像をネットで探してみたところ、顔はまぁよいのだが耳がアカン。呼ばれて飛び出てジャジャジャジャンな耳なのだ。あんたはダンボか。
どんなに顔が美しくても耳がこれじゃ許せない。
こんなに私が鼻と耳にこだわるのはアンとギルバートのせいか?
その点仁左様の耳は申し分なく美しい。ああ本当に、どこもかしこも素敵。
若かりし頃に比べると肉の落ちた肩もすっきり見えて素敵。目の横のしわも笑うととても優しくてやっぱり素敵。
座談会はあっという間に終わった。息を止めてオペラグラスを覗き込んでいたので終わるとすっかり疲れてしまった。
休憩は15分なので2階におりてお店を覗いてみることにした。エスカレーターを降りると3階に孝太郎がいた。青っぽいシャツと黒っぽいスーツを着ていた。しばらく目があって、誰だったかなと考えてみたら孝太郎だったのだ。あれまー。あなたチッコイのねー。私とたいして身長変わらないんじゃない?いろんな人に挨拶したり、話をしたりしていた。うんうん、腰の低い態度で、あんた、偉いね。美しくないし親子といえど仁左様の相手役をするなんて生意気だけど、あなたの「あい、あーいー」は女形の中で一番、一番好きだよ。
握手してもらおうかと思ったけれど、やっぱり気持ちが盛り上がらないのでやめた。
席に戻るとまた隣の奥様が話しかけてくださって、今度は旅行の話で盛り上がる。なんとこのご夫婦、船での世界一周旅行から最近戻られたのだとか。戻ってきたらSARSがえらいことになっていて、当分出られなくなってしまい大変残念だそう。すごいすごい、世界一周!それも船!30日間だか40日間だかかかったそうだが、すばらしい。うらやましい。奥様はベトナムがお気に入り、旦那様はセーシェルがよかったと笑いながら話してくださった。
幕があがる。
この出し物は「一つ家」で、これは何十年かぶりの上演だそうな。ふぅん。
仁左さまの出番が終わったことでかなりテンションも下がっている。ああ、ちょっと帰りたくなってきちゃった。
竹志郎がちょいと綺麗だったけれど、亀治郎は私の好みじゃないし竹三郎も面白くないし、ううん、ちょっと退屈。舞台とあまりにも離れているため感情移入しにくいのかもしれない。
ここで20分の休憩。
おにぎりを食べて、またお隣とおしゃべり。
昔は、御茶屋さんを通さないと芝居のチケットを取れなかったこととか、昔の役者さんのいろんなお話を聞けて面白かった。やっぱりもっと早く生まれたかったなぁ。もっと若かりし頃のもっと美しい仁左さまを観たかったなぁ。奥様も仁左さまが一番綺麗とおっしゃった。嬉しくなるねぇ。
この後は舞である。竹三郎が少し踊った後、まんまるい太鼓みたいな体型のおばちゃまたちが続いた。うううう、見たくないよ〜。こんなのがあるなんて聞いてないよ〜。一階席をのぞくと空席がちらほら。やっぱりね。また何人か続くので退屈してきた。
今度はやっと男の人達で、さっきの坂東竹志郎もいる。ちょいと綺麗な人だけど、この環境だから綺麗なのかな。最後再び坂東竹三郎が出てきて、そして終わる。一度幕が下りたが、しばらくしてするするとあがり、挨拶して本当に終わった。
帰り支度をしてお隣に挨拶して駅に向かう。出し物は仁左さま以外全く満足できなかったけれど、お隣のご夫婦のおかげでとても楽しかった。またいつかご一緒できたらもっといろんなお話を聞かせてください。
次は7月18日。行くぞ行くぞ行くぞ!!
|